小細胞肺がん:セカンドライン治療の改善

 

ルルビネクテジン単独療法

再発性小細胞肺がん(SCLC)患者への治療の選択肢は非常に限られている。プラチナ製剤感受性肺がんのセカンドライン治療に、米食品医薬品局が承認した治療薬はトポテカンだけであるが、臨床的有用性が思わしくない割には、重度の血液学的毒性を引き起こしている。

活性化した発がん性転写因子を抑制することが新薬の開発につながるかもしれない。SCLCは転写因子に依存する腫瘍であることが分かっている[1]。Rudinらが、4種類の主な転写制御因子の発現差異別に、SCLCの遺伝子のサブタイプを分類した[2]。ルルビネクテジンは発がん性転写因子の選択的阻害薬で、DNAに結合することで作用する[3]。腫瘍細胞をターゲットにするだけではなくアポトーシスに導き、さらに腫瘍随伴マクロファージで活性化した発がん性転写因子を抑制することでIL-6、 IL-8、CCL2、VEGFの産生をも抑制す る[4]。

9種類の腫瘍に対してルルビネクテジンを単独投与した場合の有効性などを、第Ⅱ相単群バスケット試験で検証した。化学療法の実施後に、ルルビネクテジン3.2 mg/m2を3週間間隔でSCLC患者に投与して得た結果を、Paz-Aresらが発表した[5]。免疫療法の治療歴のある患者は組み入れ対象になったが、CNS転移巣のある患者は除外した。2015年10月から2018年10月までの間に、合計で105人の患者が参加し、中央値にして4コースの治療を行った。この105人のうち60人がプラチナ製剤感受性の判定を(化学療法完全休薬期間が90日以上)、45人がプラチナ製剤抵抗性の判定(同90日未満)を受けた。

プラチナ製剤抵抗性SCLC患者に見られた有望な成績

ルルビネクテジンの投与によりORRは35.2%、DCRは68.6%となり、優れた抗腫瘍活性が認められた。奏効期間の中央値は5.3か月になった。ORRについては、プラチナ製剤感受性群に比べてプラチナ製剤抵抗性群で低くなった()。両群の治療効果判定にかなりの開きがあり、既承認薬のない疾患であることを考えても重視せざるを得ないだろう。プラチナ製剤感受性群の奏効率は22.2%、病勢コントロール率は51.1%に上った。免疫療法の効果が得られなかった、プラチナ製剤抵抗性群の5人のうちの3人と、同感受性群の3人のうちの2人に、ルルビネクテジン投与による奏効が確定した。前者の奏効期間は4.7か月、後者の奏効期間は6.2か月である。両群の患者の65%に腫瘍縮小効果が認められた。

<pPFSの中央値は3.9か月(プラチナ製剤抵抗性群は2.6か月、同感受性群は4.6か月)、6か月時点のPFS率は33.6%(前者は18.8%、後者は44.6%)だった。OSの中央値については両群で9.3か月(前者は5.0か月、後者は11.9か月)、 12か月時点のOS率は34.2%(前者は15.9%、後者は48.3%)に上った。ルルビネクテジンの安全性プロファイルは良好かつ治療可能な内容だった。血液学的有害事象以外のAEのうち、非常に多く見られたのは疲労、悪心、食欲不振、嘔吐である。血液学的有害事象で最も多く見られたのは好中球減少症だった。重篤なAEの発現率(10.5%)も投与中止につながるAEの発現率(1.9%)も低かったことが、解析結果から認められている。以上の成績を受けて、ルルビネクテジンはSCLC患者へのセカンドライン治療の新たな選択肢になり得ると、著者らは述べた。

表 プラチナ製剤抵抗性SCLC患者およびプラチナ製剤感受性SCLC患者へのルルビネクテジンの有効性

カルフィルゾミブ・イリノテカン併用療法

プラチナ製剤ベースの化学療法を1種類受けた後に増悪した、進展型SCLC患者を対象に、プラチナ製剤への感受性別の第Ⅱ相単群層別化試験で、イリノテカン(1コースが28日間ある治療の1日目、 8日目、15日目に125 mg/m2を投与)とプロテアーゼ阻害薬のカルフィルゾミブの併用療法を行って評価した[6]。1コース目では1日目と2日目にカルフィルゾミブを20 mg/m2投与し、それ以降は規定の日(1コースが28日間ある治療の1日目、2日目、8日目、9日目、16日目)に36 mg/m2を投与した。プロテアーゼの機能を抑制するとトポイソメラーゼIを阻害して細胞死を招くことから、両剤の相乗効果を期待したのが、併用の根拠である。合計で62人の患者が参加し、そのうち25人がプラチナ製剤抵抗性(PR群)、37人がプラチナ製剤感受性(PS群)だった。主要評価項目は6か月時点のOSである。

イリノテカン・カルフィルゾミブ併用療法は再発性SCLC患者に有効性を示し、6か月時点のOSはPR群で54%、PS群で59%となった。OSの中央値はPR群で6.8か月、PS群で6.9か月となり、PFSの中央値は前者が3.3か月、後者は3.6か月となった。病勢コントロール率は56.0%と67.6%になり、別のセカンドライン治療の薬剤に見られる数字と大差がなかったのに対して、CRとPRと判定される割合は低くなった(全患者のうちCRは1.6%、PRは16.1%)。プロテアソーム活性へのカルフィルゾミブの作用を測定するため、末梢血単核細胞でのキモトリプシン様活性(CLA)を調べたところ、PS群でもPR群でもCLAの低下は同程度であることが判明した。ここからは、プロテアソーム活性の阻害がPR群の予期せぬ治療の成功に関係していないことがうかがえる。

再発性SCLC患者への今回の併用療法の安全性プロファイルについては、トポテカン、アムルビシン、イリノテカンそれぞれの単独療法に見られたものとほぼ同じだった。患者の47%に少なくとも1種類のグレード3のAEが生じた。グレード4のAEが8人に生じ(12.9%)、3人が死亡し(4.8%)、死に至る可能性のあるAE(心筋梗塞、肺感染症)が2人、その可能性がより高いAE(敗血症)が1人に生じた。試験責任医師らの結論によると、イリノテカン・カルフィルゾミブ併用療法は再発性SCLC患者への有効な治療の選択肢であり、免疫療法の実施中に増悪した患者や、免疫チェックポイント阻害薬を投与できない患者への選択肢になる可能性がある。ただし、毒性が高いため、パフォーマンスステータスが2未満の衰弱している患者への使用は勧められない。この併用療法の有効性や安全性を確認する上で、第Ⅲ相試験でさらに検証しなければならない。

トリラシクリブ(trilaciclib)による骨髄機能の保持

レスキュー治療が存在しているとはいえ、トポテカンがかなりの割合のSCLC患者の骨髄機能を極度に抑制することから、この薬による治療を受ける患者の深刻なアンメットニーズは解消されていない。トポテカンを最大用量投与された患者の半数以上に好中球減少症が起きており、発熱性好中球減少症の発症率は約3%となっている[7]。G-CSFはなくてはならない製剤だが、副作用の骨痛が起きることが少なくない[8]。貧血が31%に、血小板減少症が54%の患者に見られ、多くの患者に赤血球造血刺激因子製剤あるいは輸血が必要になっている[7]。だが、トポテカンを減量したり投与スケジュールを変更したりすると、この薬剤の有効性がどう変化するのかが分かっていない。

トリラシクリブはCDK4/6阻害薬としては初めての、骨髄機能を強力に保持させる静注製剤である。細胞周期を通じて一時的に進行を止めるので、化学療法による造血幹細胞や前駆細胞へのダメージを防ぐことができる。ファーストライン治療に化学療法を受けた進行SCLC患者のさまざまな血球成分に関わる骨髄機能抑制に、トリラシクリブの効果が見られたことをDragnevらがすでに示している[9]。本学会で発表のあった、第Ⅱ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較G1T28-03試験では、トポテカンをセカンドラインもしくはサードラインで投与している進行SCLC患者を対象に、トリラシクリブの効果などを検証している[10]。被験群の32人には増悪するまでトリラシクリブとトポテカン1.5 mg/m2を併用投与し、対照群の29人にはプラセボとトポテカンを併用投与した。1日目から5日目まで、トポテカンを投与する前にトリラシクリブを静注している。

有効性を損ねることのないベネフィット

トリラシクリブを投与することでトポテカンによる治療がより安全になり、忍容性も高まった。対照群に比べて被験群では、より多くのコースを完遂しており、用量減量が必要になった患者も少なかった。複数の血球成分に関連する骨髄機能を保持する効果が認められて、血球減少症の発現率が低下したため、その治療が不要になった()。主要評価項目である、1コース目の重度好中球減少症の発現期間の中央値とその発現率については、被験群に統計学的有意性のある良好な数値が解析結果に現れていた(中央値:p<0.0001、発現率:p=0.016)。 重度の好中球減少症の発現期間は、発熱性好中球減少症、感染症、抗菌薬の静注、入院のリスクが増加することを表している。

被験群では、とりわけ好中球減少症と貧血といった、高グレードの血液学的毒性が生じた患者は少なかった。患者報告アウトカムを確認したところ、対照群に比べて被験群で化学療法の実施中に体調が悪化するリスクが低下したため、毒性について改善が見られた。全般的な状態と身体的な状態、肺がん患者に特化したQoL、疲労の症状とその影響、貧血の症状と身体面・機能面へのその影響に、トリラシクリブのベネフィットがあった。

また、トリラシクリブが化学療法の有効性を損ねることはなく、被験群と対照群双方の、ORR、PFS、OSは同等だった。トリラシクリブが関係するAEで特に注目したもののグレードは低く、その内訳は頭痛、急性輸液反応、静脈炎だった。今回のデータが、トポテカンをセカンドラインあるいはサードラインで使用したSCLC患者の骨髄機能を保持する効果がトリラシクリブにあることを、さらに裏付けたと著者らは結論の中で言及した。

図:セカンドラインまたはサードラインでのトポテカンの投与前の、トリラシクリブ投与による骨髄機能の保持効果
図:セカンドラインまたはサードラインでのトポテカンの投与前の、トリラシクリブ投与による骨髄機能の保持効果

参考文献:

  1. Christensen CL et al., Targeting transcriptional addictions in small cell lung cancer with a covalent CDK7 inhibitor. Cancer Cell 2014; 26(6): 909-922
  2. Rudin CM et al., Molecular subtypes of small cell lung cancer: a synthesis of human and mouse model data. Nat Rev Cancer 2019; 19(5): 289-297
  3. Santamaria Nunez G et al., Lurbinectedin specifically triggers the degradation of phosphorylated RNA polymerase II and the formation of DNA breaks in cancer cells. Mol Cancer Ther 2016; 15(10): 2399-2412
  4. Belgiovine C et al., Lurbinectedin reduces tumour-associated macrophages and the inflammatory tumour microenvironment in preclinical models. Br J Cancer 2017; 117(5): 628-638
  5. Paz-Ares L et al., Efficacy and safety profile of lurbinectedin in second-line SCLC patients: results from a phase II single-agent trial. J Clin Oncol 37, 2019 (suppl; abstr 8506)
  6. Arnold SM et al., Phase 2 study of carfilzomib plus irinotecan in small cell lung cancer progressing after prior platinum-based chemotherapy (NCT0194131). J Clin Oncol 37, 2019 (suppl; abstr 8513)
  7. on Pawel J et al., Randomized phase III trial of amrubicin versus topotecan as second-line treatment for patients with small-cell lung cancer. J Clin Oncol 2014; 32(35): 4012-4019
  8. Kirshner JJ et al., Prevention of pegfilgrastim-induced bone pain: a phase III double-blind placebo-controlled randomized clinical trial of the university of Rochester cancer center clinical community oncology program research base. J Clin Oncol 2012; 30(16): 1974-1979
  9. Dragnev KH et al., Trilaciclib decreases multi-lineage myelosuppression in extensive-stage small cell lung cancer (ES-SCLC) patients receiving 1st line chemotherapy. Ann Oncol 2018; 29 (suppl_8): viii596-viii602
  10. Hart LL et al., Effect of trilaciclib, a CDK 4/6 inhibitor, on myelosuppression in patients with previously treated extensive-stage small cell lung cancer receiving topotecan. J Clin Oncol 37, 2019 (suppl; abstr 8505)

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