巻頭言

Elisabeth Quoix, MD
Elisabeth Quoix, MD
フランス・ストラスブール,
Hôpitaux Universitaires de Strasbourg
呼吸器科
2019年度米国臨床腫瘍学会、
BJ Kennedy
賞受賞者

臨床医の皆様へ
肺がんが今日でも世界の公衆衛生上の問題であり、各国でがん関連の死因として最も多い疾患です。寿命の全体的な延びに伴い、がんの発生率も上昇していることから、最近ではとりわけこの点が高齢者にとって意味を持ってきています。肺がん患者が診断を受けた年齢の中央値は、米国では70歳、ヨーロッパでは65から70歳となっています。有効性や安全性を検討していたり、それが臨床現場ですでに証明されていたりする治療法が数多くあることを考えると、高齢患者への治療に意味はないと考える余地はないと言えるでしょう。同時に、治療の忍容性を今以上に高め、個別化医療を進める必要性を疑う余地もありません。
米国・シカゴで5月31日から6月4日にかけて開催された2019年度米国臨床腫瘍学会では、(ネオ)アジュバント療法や遺伝子変異を伴う様々な種類の腺がんに対する新薬など、肺がんの分野に関して興味を引く多様なデータの報告がありました。免疫療法はファーストライン治療に選ばれるようになってきており、術前のチェックポイント阻害薬投与を評価する第Ⅱ相試験で、納得のいくエビデンスが得られています。アジュバント療法の選択肢も拡大していますが、実際に行う患者の絞り込みにはバイオマーカーが寄与すると思われます。転移がんへの免疫療法に関する長期成績からは一定の割合の患者には効果が数年間持続することが示され、現状以外の予測バイオマーカーが登場し、免疫(化学)療法の開始前と治療開始の初期段階の両方の時期に、どの薬剤にするかを決める判断材料になる可能性も示されました。
分子標的治療に関してですが、新薬はもとより既存の薬剤を用いる併用療法が今後、進行NSCLC患者への新たな標準治療になる可能性があります。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に血管新生阻害薬や化学療法を追加するのが、併用療法の一例です。肺がんに認められることの多い遺伝子変異の種類は増加していますが、ここで重要なのはそれらを選択的かつ強力に阻害する新薬も増えつつあることです。この分野の研究に尽力する方々のおかげで、全身療法の選択肢は化学療法しかないという肺がん患者の割合は減少の一途をたどっています。

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