進展型小細胞肺がん:免疫療法の効果のシグナル

CheckMate 451試験:維持療法としての免疫療法

小細胞肺がん(SCLC)患者の大部分は進展型の段階で(ED-SCLC)診断を受けている。通常はファーストライン治療のプラチナ製剤ベースの化学療法に良く反応するが、その効果はしっかりとしておらず、予後も良好とはいえない[1、2]。NCCNガイドラインはセカンドライン以降の治療に、治験への参加、パフォーマンスステータスと無再発生存期間にもよるが全身療法、緩和療法を推奨している[1]。

今のところファーストライン治療の化学療法の効果を持続させるような維持療法はない。CheckMate 451試験は、そういった状況下での免疫療法を評価するようデザインした臨床試験である [3]。ファーストライン治療の化学療法を4コース受けた後、CR、PR、SDのいずれかの判定を受けてその状態が続いている ED-SCLC患者834人が、ニボルマブ+イピリムマブ併用群(n=279)、ニ
ボルマブ240 mg隔週1回投与群(n=280)、プラセボ群(n=275)のいずれかにランダムに割り付けられた。併用群の患者には、ニボルマブの体重換算用量(1 mg/kg)をイピリムマブ3 mg/kgと共に、3週間間隔で最大で4回投与し、その後はニボルマブ240 mgを隔週1回投与した。病勢が進行するまで、または許容できない有害事象が最長で2年続いた時点で投与を中止した。

同試験ではプラセボ群に比べて、併用群に主要評価項目のOSに統計学的に有意な改善が見られなかった(OSの中央値は併用群で9.2か月、プラセボ群で9.6か月、HR:0.92)。12か月後に行ったランドマーク解析にも同じことが見られた(前者は41%、後者は40%)。

短期の無治療期間後に行う免疫療法の効果

同試験では解析を行う順序が決まっていたため、他の評価項目には統計学的有意性を調べるための解析はせず、説明目的でのみ解析した。ニボルマブ単独群とプラセボ群の組み合わせで比較すると、患者全員の間にOSの有意差は認められなかった(単独群は10.4か月、プラセボ群は9.6か月、HR:0.84)。しかし、ファーストライン治療の化学療法の最終から5週間以内に免疫療法を始めた患者には、プラセボに比べて統計学的に有意なベネフィットがあったことをサブグループ解析が暗示した(OSの中央値は前者が12.1か月、後者が8.9か月、HR:0.66、)。ニボルマブとイピリムマブの併用は、この群の患者のOSをまったく改善させなかった(HR:0.88)。一方、化学療法終了後、5週間を過ぎてから免疫療法を受けた患者には、ニボルマブ単独もイピリムマブとの併用もOSを改善させていない(両群のHR:0.96)。

PFSを解析したところ、プラセボ群に比べて、ニボルマブとイピリムマブ併用群(HR:0.72、6か月後のPFS率は併用群が20%、プラセボ群が10%)とニボルマブ単独群(HR:0.67、同単独群が 21%、プラセボ群が10%)の両方で改善したことがうかがえた。治療効果判定についても免疫療法の両群に良好な結果が見られている。病勢コントロール率(CR+PR+SD)は併用群で45%、単独群で47%、プラセボ群で35%になっていた。奏効期間の中央値は併用群が10か月、単独群が11か月、プラセボ群が8か月である。両免疫療法群の安全性プロファイルは、同じ用量と投与スケジュールについての報告と同様だった。ニボルマブの単独療法の方が併用療法よりも忍容性が良好だった。

ED-SCLC患者への維持療法としての免疫療法の効果を、PFSおよび奏効率のデータが示唆したと著者らは結んだ。ファーストライン治療の化学療法終了からニボルマブ投与開始までの期間がより短い患者には、OSの改善が見込めるだろう。

図:ファーストライン治療の化学療法終了5週間以内に免疫療法を始めた患者の生存率をニボルマブとプラセボで比較
図:ファーストライン治療の化学療法終了5週間以内に免疫療法を始めた患者の生存率をニボルマブとプラセボで比較

Rova-T試験:

ED-SCLCへのサードライン治療として承認を受けた薬剤はいまだにない。抗体薬物複合体ロバルピツズマブ・テシリン(Rova-T)は、SCLCや神経内分泌がん(NEC)に多く発現するデルタ様タンパク質3(DLL3)を標的にする分子標的薬である[4]。SCLC患者にRova-Tを単独投与した第Ⅰ相試験およびⅡ相試験では、期待の持てる抗腫瘍作用とコントロール可能な安全性プロファイルが認められた[5、6]。

DLL3の病理学的検査所見そして、実臨床で全身療法が少なくとも2コース失敗に終わった患者へのRova-Tの臨床成績の後ろ向き解析結果が、本会議で報告された[7]。  DLL3の免疫組織化学染色を、SCLC患者61人と大細胞NEC患者7人の高悪性度神経内分泌がん患者68人に行い、大半の患者の検体からDLL3を検出した。49検体(72.1 %)
にhighly positive、10検体(14.7 %)に­
positive、9検体(13.2 %)にnegativeとの判定が出た。治療法の選択肢がなくなった患者16人には、予定しているRova-T 0.3 mg/kgの治療2コースのうち1コースは行った。このうち2人のDLL3はnegative、4人はpositive、10人はhighly positiveの判定を受けている。
7人が2コースとも受けたが、病勢進行またはAEの発現で9人が1コースだけを受けた。部分奏効と判定されたのが
4人(25%)なのに対して安定は4人(25%)、進行は8人(50%)だった。比較的よく見られた薬剤関連AEは、疲労、光線過敏症、胸水貯留、末梢性浮腫、血小板減少症で、ほぼ治療可能なものだった。

Rova-Tは特定の患者に臨床的有用性があったため、ED-SCLCへのサードライン治療以降の選択肢になりうると、著者らは結論づけた。大部分のSCLC患者でDLL3が陽性となったが、同試験のような環境でDLL3がバイオマーカーになるのかは、今後の研究で評価する必要がある。

参考文献:

  1. National Comprehensive Cancer Network. Small Cell Lung Cancer. V 1.2019
  2. Hurwitz JL et al., New advances in the second-line treatment of small cell lung cancer. Oncologist 2009; 14(10): 986-994
  3. Owonikoko TK et al., Nivolumab plus ipilimumab, nivolumab, or placebo as maintenance therapy in patients with extensive disease small cell lung cancer after first-line platinum-based chemotherapy: results from the double-blind, randomized phase 3 CheckMate 451 study. ELCC 2019, abstract LBA1_PR
  4. Deng SM et al., The Notch ligand delta-like 3 promotes tumor growth and inhibits Notch signaling in lung cancer cells in mice. Biochem Biophys Res Commun 2017; 483(1): 488-494
  5. Carbone DP et al., Efficacy and safety of rovalpituzumab tesirine in patients with DLL3-expressing, ≥ 3rd line small cell lung cancer: results from the phase 2 TRINITY study. J Clin Oncol 2018; 36 (suppl; abstr 8507)
  6. Lashari BH et al., Rovalpituzumab tesirine:
    a novel DLL3-targeting antibody-drug conjugate. Drugs R D. 2018; 18(4): 255-258
  7. Hochmair M et al., Real-life experience with the implementation of DLL3 staining and the subsequent treatment with rovalpituzumab tesirine in heavily pretreated SLC patients. ELCC 2019, abstract 63P

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