EGFR TKI療法の順番を重視するいくつかの理由

インタビュー: Maximilian Hochmair, MD、オーストリア・ウィーン、Otto Wagner Spital、呼吸器内科・集中治療科呼吸器腫瘍部

Maximilian Hochmair, MD、オーストリア・ウィーン、Otto Wagner Spital、呼吸器内科・集中治療科呼吸器腫瘍部
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Maximilian Hochmair, MD、オーストリア・ウィーン、Otto Wagner Spital、呼吸器内科・集中治療科呼吸器腫瘍部

FLAURA試験の成績が報告されて以来、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者へのファーストライン治療にどのEGFR TKIを選択するかで議論が起きています。どういった点がこの試験の限界だと、今はお考えになりますか?
ゲフィチニブとエルロチニブに比べてオシメルチニブには生存期間などへの効果があることが、この試験で示されています[1]。しかし、対照群にアファチニブを含めなかったことで、得られるはずだった知見を得ることができなくなりました。エルロチニブあるいはゲフィチニブの投与中に増悪した患者のT790M遺伝子変異の検査が必須ではなく、オシメルチニブをセカンドライン治療として投与していませんので、この質問にはお答えできません。オシメルチニブを投与されたのは患者の25%ほどにとどまっています。こういった理由で、ここで結論を出すことができないのです。
オーストリアでは通常、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者にはオシメルチニブをファーストライン治療として処方しています。LUX-Lung 3と6の各試験では、エクソン19欠失変異のある患者の生存期間などに有効であることが示されました[2]。また、アファチニブの有効性を損ねずに投与量を減量できることも分かっています。その一方、オシメルチニブをファーストライン治療に使用するとしたら、耐性が生じることが頻繁に問題となるでしょう。アファチニブ療法が失敗した後よりもオシメルチニブ療法に失敗した後に、ドラッガブルターゲットを見つけることの方がはるかに難しいのです[3、4]。60%の患者からはドライバー変異がまったく見つかっていません。オシメルチニブへの耐性を獲得してしまったら、大半の患者に残された選択肢は化学療法だけになります。

EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者には、どの順番に治療を行うのが理想的ですか?
アファチニブの後にオシメルチニブという順番にする理由は複数あります。一つは、第一世代あるいは第二世代のEGFR TKIの使用中に増悪した際のT790M遺伝子変異による耐性の多さで、検出率は60%から75%に上ります。T790M遺伝子変異が生じた患者へのオシメルチニブの効果に疑う余地はありません。もう一つは、長期転帰の良さです。私が勤務する医療機関では日常的にアファチニブの後にオシメルチニブを投与していて、多くの患者に非常に高い効果が現れています。患者にはアファチニブとオシメルチニブを長期間続ける傾向があります。
ESMO年次総会で報告のあったデータでも、アファチニブをファーストライン治療に用いることの有用性が強調されています。治療ラインにかかわらずアファチニブの後にオシメルチニブを投与することで、第一世代のEGFR TKIの後にオシメルチニブを投与するよりも奏効率と病勢コントロール率が有意に改善することが、後ろ向き試験で示されました[5]。この結果は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブのいずれかの治療を受けた患者1,354人を解析した日本のリアルワールド研究の結果とも一致しています[6]。傾向スコアで補正しても、第一世代のEGFR TKIよりもアファチニブにOSを延長させる傾向のあることを、責任医師らが言及しています。

治療期間については、治療の順番に期待できることはありますか?
LUX-Lung 3、6、7の各試験での後ろ向き解析の結果では、治療ラインを問わずアファチニブの後にオシメルチニブを投与された患者の、オシメルチニブの投与期間の中央値は20.2か月になっていました[7]。当医療機関で行った、近々発表する解析結果によると、アファチニブとオシメルチニブをそれぞれ12か月間投与された患者67人のうち、半数が解析を行った時点でまだオシメルチニブの投与を受けていました。先頃報告された国際共同試験のGioTag試験では、実臨床でアファチニブの後にオシメルチニブをファーストライン治療に用いて評価しています[8]。同試験ではデータの入力を始める10か月前から、オシメルチニブの投与を開始した患者のデータのみを収集しています。10か国で合計204人の患者がこの順番で治療を行っており、そのうちの48%が現在でもその治療を続けています。この結果は非常に期待できる内容です。この患者集団の治療期間全体の中央値は27.6か月です。治療成功期間については、アファチニブのファーストライン治療が11.9か月、オシメルチニブのセカンドライン治療が14.3か月となっています。このデータは、当医療機関の小規模の患者コ
ホートを観察した結果と一致しています。24か月目には79%の、30か月目には69%の患者が生存していました。L858R点突然変異を検出した患者よりもエクソン19欠失変異を検出した患者で治療期間が長くなっています(エクソン19欠失変異30.3か月群、L858R点突然変異19.1か月)。ベースライン時のパフォーマンスステータスの良好さ(ECOG PSが0または1)も治療期間の長さに関係していて、ECOG PSが2以上の患者では22.2か月であったのに対して、0または1の患者では31.3か月です。ファーストライン治療にアファチニブを投与し、増悪した時点でオシメルチニブを投与する方法で、脳転移の病勢をコントロールできていました。
CNS病変へのオシメルチニブの効果と比べたアファチニブの効果をどう評価しますか?
脳転移は、アファチニブとオシメルチニブのどちらでも十分に治療可能です。実際のところCNS病変のある患者へのEGFR TKIの効果に関しては、大半のデータに両薬剤の有効性が示されています。アファチニブは脳脊髄液に移行して蓄積し、適度な濃度になります[9]。当医療機関では、アファチニブの投与により何人かの患者の脳転移が完全寛解に達し、その状態が長期間持続しているのを確認しています[10]。脳転移のない患者の治療中に転移が見られる場合は大半がCNS以外の部位なので、アファチニブにはCNSへの転移を防止する効果もあると思われます[11]。

参考文献:

  1. Soria JC et al., Osimertinib in untreated EGFR-mutated advanced non-small-cell lung cancer. N Engl J Med 2018; 378: 113-125
  2. Yang JC et al., Afatinib versus cisplatin-based chemotherapy for EGFR mutation-positive lung adenocarcinoma (LUX-Lung 3 and LUX-Lung 6): analysis of overall survival data from two randomised, phase 3 trials. Lancet Oncol 2015; 16(2): 141-151
  3. Ramalingam SS et al., Mechanisms of acquired resistance to first-line osimertinib: preliminary data from the double-blind, randomised phase III FLAURA study. ESMO 2018, abstract LBA50
  4. Papadimitrakopoulou V et al., Analysis of resistance mechanisms to osimertinib in patients with EGFR T790M advanced NSCLC from the AURA3 study. ESMO 2018, abstract LBA51
  5. Tamiya M et al., Which is better EGFR-TKI followed by osimertinib between afatinib and gefitinib/erlotinib? ESMO 2018, abstract 1459P
  6. Ito K et al., Comparative analysis of overall survival using propensity score between first- and second-generation EGFR TKI: real world data of 1,354 patients with EGFR mutant NSCLC. ESMO 2018, abstract 1455P
  7. Sequist LV et al., Subsequent therapies post-afatinib among patients with EGFR mutation-positive NSCLC in LUX-Lung (LL) 3, 6 and 7. ESMO 2017, abstract 1349P
  8. Hochmair MJ et al., Sequential treatment with afatinib and osimertinib in patients with EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer: an observational study. Future Oncol 2018 Oct 19. doi: 10.2217/fon-2018-0711. [Epub ahead of print]
  9. Tamiya A et al., Cerebrospinal fluid penetration rate and efficacy of afatinib in patients with EGFR mutation-positive non-small cell lung cancer with leptomeningeal carcinomatosis: a multicenter prospective study. Anticancer Res 2017; 37(8): 4177-4182
  10. Hochmair M et al., Complete remissions in afatinib-treated non-small-cell lung cancer patients with symptomatic brain metastases. Anticancer Drugs 2016; 27(9): 914-915
  11. Girard N, Optimizing outcomes in EGFR mutation-positive NSCLC: which tyrosine kinase inhibitor and when? Future Oncol 2018; 14(11): 1117-1132