手術の最新情報 現在のオプションの再定義

2005年、国際肺癌学会(IASLC)病期判定委員会は肺癌の完全切除の定義を提案し、これには不確実な切除の基準が含まれていた[1]。不確実な切除は、表に詳述した基準で定義された。IASLC病期判定および予後因子委員会を代表して、EdwardsらはNSCLC手術を受けた第8版データベースから得られた14,712例の患者のデータを用いて切除断端状況のレトロスペクティブ分析を行った[2]。これらの患者に関して完全切除状況と生存期間データが利用できた。ネオアジュバント療法症例は除外された。以下のうちのいずれかに当てはまる場合、症例はR(不確実)[R(un)]に再割り当てされた:
+ 検査されたN1またはN2リンパ節転移が3ヵ所未満
+ 選択的リンパ節郭清に満たない
+ N2リンパ節転移の被膜外浸潤
+ 最上部リンパ節ステーション陽性
(最上部リンパ節の状況は不明)
+ 気管支切除断端の上皮内癌(現在、R1 [i. s.])
+ 胸腔内洗浄細胞診陽性(現在、R1 [cy+])
表 不確実な切除の定義

質の高い外科的病期判定の重要性

従来の切除状況に準じた生存期間曲線はR0とR1の間に有意差を示したが、R1とR2の間には有意差を示さなかった。再割り当て時点で、症例(n=8,203)の55.8%がR(un)症例になった。R(un)カテゴリーへの再割り当ての理由のうち、妥当な数の「最上部ステーション陽性のみ」の症例があったが、系統的リンパ節郭清と比較して厳密ではない術中病期判定が症例の大半で見られた。最上部リンパ節部位が陽性のpN2症例では、生存期間中央値が最上部リンパ節部位陰性より14ヶ月短かった(41.0対55.0ヶ月; HR, 1.45; p< 0.0001)。N0症例での切除状況に準じた生存期間曲線間には距離があったが、有意ではなかった。リンパ節陽性症例では、生存期間中央値がR0と比較してR(un)の患者では20ヶ月短かった(50.0対70.0ヶ月; HR, 1.27; p < 0,0001)。しかし、その他の提案されたR(un)カテゴリーの数は少なかった。
完全切除に関してIASLCが提案した定義は妥当性があると著者は結論付けた。質の高い外科的病期判定によって病期群の最も正確な割り当てと、病期移行に伴って病期ごとの最も有益な生存期間データが得られることを認識することが重要である。しかし、臨床試験では、これらの基準を用いて系統的に評価できる手術の品質基準を考慮に入れることが不可欠である。最適な病期判定データは、日常的な補助療法に関する最適な意志決定と、補助療法臨床試験における生存期間の正確な解釈も可能にする。Rドメイン小委員会は、提案されたRステータス記述語に改良を加えるために引き続き作業する。

スクリーニングで発見された肺癌の取扱方法

日本、東京の国立がん研究センター中央病院、呼吸器外科、渡辺俊一医師がCTスクリーニングを用いて発見された小腫瘍の最適な管理について論じた[3]。同氏は、最初の一連の区域切除成功例が1973年に報告された[4]と述べたが、肺葉切除を縮小手術と比較した唯一の無作為化対照臨床試験では肺
葉切除の結果が有意に良好であったこ
とから[5]、半世紀以上にわたって肺葉
切除が標準外科的アプローチとみなさ
れてきた
しかし現在、CTスクリーニングを用いて多くの小さなsubsolid腫瘍が発見されている。「理想的な医療処置、すなわち、観察、区域切除、または肺葉切除は、現在のところ一部の小結節については議論の余地がある」と渡辺医師は強調した。日本では、手術の種類は腫瘍のサイズとC/T比、すなわち最大腫瘍径に対するコンソリデーションの比に基づいて選択される。「JCOG0201臨床試験に基づき、C/T比が0.25未満の場合、非侵襲性と考えられる」と渡辺医師は述べた[6]。
縮小切除を行う場合、区域切除と楔状切除の間で選択を行う必要がある。区域切除を行う場合、局所リンパ管を取り除く。このことは、解剖学的区域切除を侵襲性腫瘍に対しても適用できることを意味する。しかし、腫瘍細胞がリンパ管内に存続するかもしれないため、非解剖学的楔状切除は非侵襲性腫瘍に限定する必要がある。

公表予定の臨床試験結果

縮小切除の状況で、留意点は十分な切除断端を確保することと胸膜浸潤を伴う腫瘍の除外にあると渡辺医師は指摘した。「切除断端は腫瘍径を超える必要があるが、これは当然困難な場合もあり、特に肺尖部にで問題となる。」胸膜浸潤が見られる場合、スキップ転移の可能性がある。
2009年、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、小型(2 cm以下)肺腫瘍に対するさまざまな外科的アプローチを探る2件の臨床試験を開始した(図1)。単一群、第II相JCOG0804試験では広範囲楔状切除を調査し、第III相JCOG0802試験では肺葉切除を区域切除と比較した。「両方の試験で登録は既に完了しており、患者はフォローアップを受けている。」
JCOGは、大きさが2cmを超える(C/T比0.5未満)T1c腫瘍のある患者での区域切除に関する別の第III相試験、JCOG1211を行っている。  この試験は、2 cm以下(C/T比0.25未満)と3cm以下(C/T比0.5未満)の径の腫瘍で非常に優れた予後を示したJCOG0201の生存期間転帰に基づいて開始された[7]。5年全生存期間(OS)比はそれぞれ97.1%と96.7%であった。JCOG1211は既に登録を完了している。全体として、縮小切除に関する3件の臨床試験は1,836の症例から構成されている。3件の結果は教科書の修正につながる可能性が高いと渡辺医師は結論づけた。

図1:縮小切除を探る進行中の臨床試験

両側縦隔リンパ節切除術

リンパ排液が左下肺葉から対側縦隔リンパ節に生じることが実証研究から分かっている[8]。これまでに広範囲縦隔リンパ節切除の生存効果に関するレベルIのエビデンスはなく、肺癌における両側縦隔リンパ節郭清の役割は依然として不明である。そのため、無作為化対照試験の目的は、NSCLC患者の生存期間に対する両側縦隔リンパ節切除術(BML)の影響を分析することだった[9]。2010年~2013年に、NSCLCステージI~IIIaの患者89例が系統的リンパ節郭清(SLND:n=49)またはBML(n=40)のいずれかによる標準的肺切除術にランダムに割り当てられた。
平均66.5ヶ月のフォローアップ後、4年生存率はSLND群よりもBML群において有意に高かった(72.5%対51%;p=0.039)。腫瘍のさまざまな肺葉部位に関して別の比較を行い、右肺に位置した腫瘍と左上肺葉に位置した腫瘍の2つの群の間に4年生存率と平均生存期間に関して有意な差は示されなかった。しかし、左下肺葉の分析からBMLコホートで4年生存率が有意に改善されることが明らかになった(90.9%対25%;p = 0.003;図2)。それにより、平均生存期間は有意に長かった(1,923日対1,244日;p=0.027)。
左下肺葉に位置するNSCLCに関して、対側縦隔リンパ節の除去が生存期間に関する有意な有益性と関連しているかもしれないことがこれらの所見から示された。患者数が少なかったため、大規模無作為化対照試験で臨床試験結果を確認する必要がある。これらの所見を検証することを目的に、同様の試験実施計画に基づいた大規模な国際的臨床試験が最近開始された。

図2:両側縦隔リンパ節切除術(BML)または系統的リンパ節郭清(SLND)のいずれかによる標準的肺切除術を受けた患者の長期生存率

転移性NSCLCでの原発腫瘍切除

少数個転移NSCLCは、手術や放射線治療などの局所アブレーティブ治療が有益となるかもしれない低悪性度表現型である可能性がある。Kangらは、転移性癌のOSと無増悪生存期間(PFS)と共に患者の3年OSとPFSに関する原発腫瘍切除と積極的な局所地固め療法の潜在的な効果を評価した[10]。さらに、転移性NSCLC患者の治療における手術転帰の評価と、手術する患者の選択を改善するためにOSとPFSを予測する臨床的因子の特定を目的に含めた。
ステージIVで、転移部位が3ヵ所以下の治療例を連続して登録し、レトロスペクティブに分析した。患者は標準一次全身療法(すなわち、4サイクル以上のプラチナベースの二重化学療法)または腫瘍がEGFR変異を保有するとが確認された場合は3ヶ月間以上の承認済み一次EGFR TKI療法を受けた。肺切除の範囲に応じて、患者を2つのサブグループ、すなわち治癒目的群(ITC:肺病巣全体または原発巣の除去)と生検目的群(ITB:主要病巣を切除せず、侵襲性が最低限のアプローチによる診断的生検のみ)に分けた。
2000年~2015年に、115例の患者を登録した。分析の結果、全身療法と組み合わせた原発腫瘍切除が実行可能で忍容性があり、維持療法や観察単独と比較してOSとPFSが有意に延長したことが示された。OS中央値はITCで未到達、ITBで23ヶ月であり(HR、0.38;p<0.0001)、PFS中央値は36ヶ月対10ヶ月であった
(HR、0.35;p<0.0001)。ITCコホートではM1a、M1b、M1cサブグループ全体にわたってOSとPFSの両方が長かった。多変量Cox比例回帰分析でOSとPFSとの関連に関して評価された特性のうち、臨床的遠隔転移と治療の種類(ITC対ITB)のみが有意な因子に特定された。いずれの群の患者もグレード4の有害事象(AE)を示さず、AEによる死亡は生じなかった。これらの結果は予備的であるが、さらなる評価に値すると著者は指摘した。恩恵を受ける可能性が最も高い患者のサブグループの特定が必要である。

低侵襲手術の長所

ステージIのNSCLC高齢患者では、縮小切除が標準的肺葉切除の代替法になることが示された[11]。Laohathaiらは、手術リスクを下げ、肺機能を維持するため、このアプローチが好ましいのではないかと考えた。2003年~2016年に、ステージIのNSCLCの根治的切除術を受けた80歳代患者77例を登録した。53例が肺葉切除を、24例が縮小切除を受けた。2つの群は、縮小切除治療群でCOPDの頻度が高かったほかは、性別、喫煙歴、一般状態、併存疾患について違いはなかった。レトロスペクティブに臨床データを収集した。OSと無再発生存期間(RFS)のほか、合併症率も転帰に含めた。
実際、OSに群間差は認められず、5年OSは肺葉切除と縮小切除でそれぞれ51%、68%(p=0.354)であった。このことはRFS(再発率、それぞれ57.14%対42.86%、p=0.623)にも当てはまった。同時に、合併症は肺葉切除群よりも縮小切除群で頻度が低かった(26%対13%)。肺炎と持続的空気漏れが肺葉切除群の主なAEであった。縮小切除を受けた患者では入院期間(LOS)が有意に短かった(p=0.011)。

VATS対OT

同様に、レトロスペクティブ分析の結果、生存期間転帰に関してはビデオ補助胸腔鏡手術(VATS)と開胸手術(OT)の同等性が示されたが、低侵襲アプローチにはLOSの面で利点があることが明らかになった。VATSは早期肺癌治療の推奨アプローチとなった。しかし、イギリスでのVIOLET試験の登録が近々始まるものの、大規模ランダム化臨床試験では今までのところOTと正式に比較されていない。
この単一施設カルテレビューには、2005年~2015年にVATSまたはOTのいずれかを受けたステージI~IIIの肺癌との診断を受けた235例の患者を含めた。この集団では、それぞれ101症例と134症例でVATSとOTを行った。診断時の年齢、性別、喫煙状況、腫瘍の位置、腫瘍の大きさは群間で同等であった。
VATSとOTの間に、切除断端陽性のリスクに関する有意差は生じなかった。OSとRFSは両方の手術手技で同等であった(それぞれ、p=0.68とp=0.23)が、LOS中央値はVATSを受けた患者で有意に短かった(4日対6日;p=0.002)。診断時の腫瘍病期に関わらず、この良好な転帰を達成した。

 

参考文献

  1. Rami-Porta R et al., Complete resection in lung cancer surgery: proposed definition.Lung Cancer 2005; 49(1): 25-33
  2. Edwards J et al., The IASLC Lung Cancer Staging Project: analysis of resection margin status and proposals for R status descriptors for non-small cell lung cancer.WCLC 2017, PL 02.06
  3. Watanabe S et al., What is the optimal management of screen-detected lung cancers? WCLC 2017, PL 01.04
  4. Jensik RJ et al., Segmental resection for lung cancer.A fifteen-year experience.J Thorac Cardiovasc Surg 1973; 66: 563-572
  5. Ginsberg RJ, Rubinstein LV, Randomized trial of lobectomy versus limited resection for T1 N0 non-small cell lung cancer.Lung Cancer Study Group.Ann Thorac Surg 1995; 60: 615-623
  6. Suzuki K et al., A prospective radiological study of thin-section computed tomography to predict pathological noninvasiveness in peripheral clinical IA lung cancer (Japan Clinical Oncology Group 0201).J Thorac Oncol 2011; 6: 751-756
  7. Asamura H et al., Radiographically determined noninvasive adenocarcinoma of the lung: survival outcomes of Japan Clinical Oncology Group 0201.J Thorac Cardiovasc Surg 2013; 146: 24-30
  8. Hata E et al., Rationale for extended lymphadenectomy for lung cancer.Theor Surg 1990; 5: 19-25
  9. Kuzdzal J et al., Randomised trial of systematic lymph node dissection versus bilateral mediastinal lymphadenectomy in patients with NSCLC – the Cracow Study.WCLC 2017, OA 04.01
  10. Kang X et al., Primary tumor resection versus maintenance therapy of observation for patients with metastatic non-small cell lung cancer in combination with first-line systemic therapy.WCLC 2017, OA 04.03
  11. Laohathai S et al., Comparison between sublobar and lobar resection in octagenarians with pathologic stage I non-small cell lung cancer.WCLC 2017, P1.16-005
  12. Shaheen S et al., Less is more – video assisted thoracic surgery (VATS) vs. open thoracotomy in the management of resectable lung cancer.WCLC 2017, P1.16-006

© 2017 Springer-Verlag GmbH, Impressum