HER2ドライバー変異の阻害により効果がもたらされる

HER2 (ErbB2) の増幅または過剰発現はNSCLCにおいて同定されており、体細胞HER2変異は約2%〜4%の患者で起こる[1, 2]。HER2変異型進行NSCLCの設定では、化学療法に対する反応は貧弱である[3]。同様に、Pan-HER阻害剤単剤では、限られた効果しか得られず、奏功期間の短縮を示すようである[4, 5]。

ネラチニブ+テムシロリムス

ここで、二重経路阻害の治療アプローチの可能性を示す。前臨床データ[4]および第I相試験[5]によると、HER2 / EGFR阻害TKIのネラチニブおよびmTOR阻害剤のテムシロリムスは、相乗効果を有する。したがって、多国籍共同無作為化第II相試験では、進行性または転移性のHER2変異NSCLCを有する60名の患者を対象にして、ネラチニブ240 mg 1日1回投与およびテネシロリムス8 mg/週投与の併用とネラチニブ240 mg 1日1回投与とを比較した[6]。以前の試験ではネラチニブ単独で評価されなかったので、両群は独立して評価された。
HER2経路およびPI3K経路の双方の阻害により、HER2経路阻害単独よりも優れた効果がいくつか得られた。ネラチニブとテムシロリムスの併用療法では、PFS中央値が4.0ヶ月(ネラチニブ単独で2.9ヶ月)、OS中央値が15.1ヶ月(ネラチニブ単独で10.0ヶ月)に延長した。患者の14%がこの併用療法で奏功に達した(ネラチニブ単独では奏功0%)。また、1名の患者が完全寛解 (2%)、5名が部分寛解 (12%) であった。最も一般的な毒性は下痢であったが、これはロペラミドの事前投与で管理可能であった。
体細胞HER2変異の分布および治療に対する最良応答の分析によれば、変異特異的な応答は起こらず、応答は複数のHER2変異体で時折観察された。一部の患者で1年以上の長期間の奏功があったため、予測的なバイオマーカの探索が進行中である。

ピロチニブによる有望な結果

新規経口TKIのピロチニブは、不可逆的な方法で、ATPのHER2およびEGFRへの結合を標的とする。WCLCにおいて、非盲検、単一群、第II相試験の有望な予備的結果が発表された[7]。この試験では、進行したHER2陽性NSCLC患者11名を対象にして、1回以上の化学療法レジメンの後のピロチニブ400 mg 1日1回投与が評価された。
6名の患者 (54.5%) で部分奏功が達成され、3名の患者 (27.3%) は疾患の安定を示した(参照)。PFS中央値は6.2ヶ月であったが、解析の時点でOSは50%に達しておらず、5名の患者が治療中であった。下痢、疲労および発疹が最も一般的なAEであったが、これらはすべてグレード1または2であった。これらの結果を検証するため、多施設共同で大規模な第II相臨床試験を実施する予定である。
さらに、単一群、非盲検、多施設共同、第II相試験において、進行性HER2変異陽性NSCLC患者を対象に、ErbBファミリー阻害剤であるアファチニブを、プラチナ製剤ベース化学療法の失敗後の、アファチニブ単独投与およびアファチニブとパクリタキセルとを併用投与する評価が進行中である[8]。アファチニブは、HER2変異型肺癌モデルにおいて前臨床活性を示し、HER2変異型NSCLC患者においても臨床活性を示している[2, 9]。

図:HER2-陽性NSCLC、進行性患者11名のパイロチニブに対する奏功
図:HER2-陽性NSCLC、進行性患者11名のパイロチニブに対する奏功

 

参考文献

  1. Yu HA et al., Analysis of tumor specimens at the time of acquired resistance to EGFR-TKI therapy in 155 patients with EGFR-mutant lung cancers.Clin Cancer Res 2013; 19: 2240-2247
  2. Mazières J et al., Lung cancer that harbors an HER2 mutation: epidemiologic characteristics and therapeutic perspectives.J Clin Oncol 2013; 31(16): 1997-2003
  3. Garrido-Castro AC & Felip E. HER2 driven non-small cell lung cancer (NSCLC): potential therapeutic approaches.Transl Lung Cancer Res 2013; 2(2): 122-127
  4. Perera SA et al., HER2YVMA drives rapid development of adenosquamous lung tumors in mice that are sensitive to BIBW2992 and rapamycin combination therapy. PNAS 2009; 106(2):
    474-479
  5. Gandhi L et al., Phase I study of neratinib in combination with temsirolimus in patients with human epidermal growth factor receptor 2-dependent and other solid tumors.J Clin Oncol 2014; 32(2): 68-75
  6. Gandi L et al., Neratinib ± temsirolimus in HER2-mutant lung cancers: an international, randomized phase II study.WCLC 2016, MA04.02
  7. Ren S et al., Preliminary results of a phase II study about the efficacy and safety of pyrotinib in patients with HER2-mutant advanced NSCLC.WCLC 2016, MA04.03
  8. Zhou C et al., Afatinib in patients with advanced HER2 mutation-positive NSCLC previously treated with chemotherapy.WCLC 2016, P2.06-013
  9. De Grève J et al., Clinical activity of afatinib (BIBW 2992) in patients with lung adenocarcinoma with mutations in the kinase domain of HER2/neu.Lung Cancer 2012; 76: 123-127

Author: Judith Moser, Lecture Board: Maximilian Hochmair, MD

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