「生存期間は肺癌スクリーニングの結果です」

11月の肺癌啓発月間(LCAM)中、メモ-イン・オンコロジーは、国際肺癌学会(IASLC)のCEOで、米国コロラド州、コロラド大学薬科大学院教授のFred Hirsch医師のお話しを伺いました。肺癌啓発月間連合(LCAMC)は、IASLCが率いる、胸部癌患者の転帰改善に焦点を合わせた20以上の世界的非営利団体から成るグループです。
肺癌スクリーニングが、適格と思われる高リスク患者の一部だけに実施されている理由は何でしょう?
米国予防サービスタスクフォースは、低線量CTスキャンを用いて、30箱・年の喫煙歴があり、現在喫煙しているか、過去15年以内に禁煙した55~80歳の患者をスクリーニングすることを勧めています。これらのガイドラインはメディケア・メディケイド・サービス・センター(CMS)の支援も受けています。その推奨の根拠は、無作為化全国肺スクリーニング試験(NLST)研究でした。この研究では、低線量CTスクリーニングを従来型胸部X線スクリーニングの比較が行われし、CTスキャンではX線スキャンと比較して肺癌死亡率が20%低下ました。

しかし、米国でのこれらのスクリーニングガイドライの実践は極めて遅々としたものでした。その理由は多種多様と言えます。主な理由の1つは、一般公共サービスや医療従事者に対するガイドラインについての教育の欠如です。もうひとつの理由は、CTスキャンによって生じうる偽陽性率が高いことかもしれません(CTが検出した小結節の大部分は悪性ではなく、一部の人は小結節が良性であることを知るためにさらに診断的精密検査を受ける必要があります)。医師は偽陽性率を考えると低線量CTスキャンを使用することに慎重なのかもしれません。
他の多くの国では、他の試験に基づいた科学的エビデンスの蓄積を待っているため、スクリーニングガイドラインがまだ存在しません。国を問わず、治療が最も効果的な初期段階で肺癌を発見できるように総合的なガイドラインの作成と実践を促す必要があります。ガイドライン実践の非常に大きな影響について医師を教育するほか、スクリーニングに適格となるリスク因子について一般市民を教育することが極めて重要です。成功すれば、世界中の肺癌による死亡率を大幅に低下させることができます。

この数年の間に立て続けに出現した最新の治療選択肢の幅について地域医師を教育するにはどうすればいいでしょうか?
近年、精密医薬や免疫療法の様な新しい治療法による大成功を見てきました。腫瘍細胞の研究を通して、腫瘍の成長に拍車を掛ける特定の異常を科学者が明らかにしています。その知識を用いて、医師は異常を標的にする特有の精密治療を開発しています。患者の免疫系を活性化し、癌細胞を特定し、攻撃する有望な薬物療法の開発も目の当たりにしています。これらの治療がまだ新興のものですが、、臨床試験からの非常に有望な結果が得られています。
残念ながら、これらの成功は研究コミュニティが活動的な特定の国や学術施設に限られることが多くあります。最新の進展を世界中の医師と共有し、患者に利用できる最新の科学的知識を提供することが非常に重要です。

肺癌の臨床試験を計画するときの障害はどこにありますか?
より多くの臨床試験を計画する上で私たちが直面する最大の課題の1つは、患者集団の不足です。実際、米国の肺癌患者の3~5 %だけが臨床試験に参加します。多くの場合、患者とその担当医は参加の可能性がある臨床試験に気付いていません – 単にその存在を知らないためか、あるいは最新の適用できる研究の事情をよく知らないためです。一部の患者は、他の治療を受けた後に初めて臨床試験の選択肢に気付きます。この場合、多くの国では将来の臨床試験に対して不適格と見なされます。
もうひとつの大きな障害は、世界的に見て資金調達と肺癌研究が不足していることです肺癌は癌による死亡の32%を引き起こしていますが、癌研究資金の10%しか受け取っていません。資金提供におけるこのギャップが臨
床試験の件数が少ないことにつなが
ります。

Fred R. Hirsch, MD, PhD CEO of the IASLC Professor, University of Colorado School of Medicine, Denver, Colorado, USA

Fred Hirsch, MD, PhD IASLCのCEO 米国コロラド州デンバー、コロラド大学薬科大学院教授

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