セカンドライン治療以降の血管新生阻害薬の併用療法に良好な 結果

VARGADO試験:免疫療法実施後のニンテダニブ投与

実施中の非介入前向き研究であるVARGADO試験では、実臨床で進行肺がんにファーストライン治療の化学療法を受けた患者を対象に、血管新生阻害薬のニンテダニブとドセタキセルの併用療法を評価している。同試験はドイツ国内の約100施設で、3つの患者コホートを対象に行われている。コホートAにはファーストライン治療に化学療法を、セカンドライン治療にはニンテダニブ+ドセタキセルの併用療法を行った。コホートBにはファーストライン治療に化学療法を、セカンドライン治療に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与を、サードライン治療にはニンテダニブ+ドセタキセルの併用療法を実施。コホートCにはファーストライン治療に化学療法とICI投与を、セカンドライン治療にニンテダニブ+ドセタキセルの併用療法をしている(図1)。 本会議ではGrohéらが、コホートBの患者22人の初期解析結果を発表した[1]。ICI投与後に進行肺がんが進行した患者にニンテダニブ+ドセタキセルの併用療法の臨床的有用性があること、そして安全性プロファイルがコントロール可能であったことを、解析結果が示した。患者12人のうち病勢コントロール率が良好だった10人(83%)については、7人(58%)がPR、3人(25%)がSDの判定を受けた。同併用療法に見られた臨床的有用性はいずれの治療効果判定でも共通しており、PFSの中央値は5.5か月だった。安全性プロファイルも既知のものと同様な内容だった。治療関連AEは口内炎、白血球減少症、悪心がほとんどだった。

図1:非介入前向き研究のVARGADO試験のデザイン

図1:非介入前向き研究のVARGADO試験のデザイン

がん微小環境への効果

血管新生スイッチが、根底にある治療の作用機序を表しているという仮説があるが、それが同試験で見られた。免疫チェックポイント阻害薬への耐性と密接につながっている、がん微小環境での免疫抑制機構と、VEGFが誘導する血管新生との関連性が示されている[2]。そのため、異常に発生した血管がICIへの耐性の一因になっていることも考えられる。この状態では血管新生阻害薬が血管を正常化させ、腫瘍への免疫細胞のアクセスを改善させられるので、がん微小環境での免疫抑制の方にバランスが傾く[3]。このようにしてがん微小環境をターゲットにすれば、ICIの作用が復活するどころか作用が向上する可能性すらある。 初期解析で得たデータが、今のところ臨床的エビデンスがわずかしかない進行肺がん患者に関する重要な知見になったと、著者らが述べている。同試験は継続中で、参加者数も増加している。

ベバシズマブ+EGFR TKIの併用療法

VEGF阻害薬であるモノクローナル抗体のベバシズマブと第一世代のEGFR TKIのエルロチニブの併用療法を、ファーストライン治療として用いた第Ⅱ相JO25567試験[4]そして第III相NEJ026試験[5]で、期待できる効果が認められた。しかし、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者で脳転移巣のある患者への同併用療法の効果は、まだ判明していない。そこで、Jiangらは多施設共同後ろ向き研究を行い、複数の脳転移巣(4個以上)を認める患者を対象に、第一世代のEGFR TKIのエルロチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブとベバシズマブの併用投与が、EGFR TKIの単独投与よりも生存率を改善させるのか調べた[6]。脳転移巣のあるEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の合計208人が、解析対象になった。そのうち59人にEGFR TKI1種類とベバシズマブを併用投与し、149人にEGFR TKIを単独投与した。最も多く使用したEGFR TKIはエルロチニブである。 頭蓋内病変のPFS、全身性病変のPFS、OSを主要評価項目とした。すべての評価項目で、単独群よりも併用群に統計学的有意性のある改善が認められた。併用群の頭蓋内病変のPFSの中央値は14.0か月だったのに対して単独群では8.2か月(HR:0.56、p<0.001)、全身性病変のPFSについては前者が14.4か月、後者が9.0か月だった(HR:0.55、 p<0.001)。それ以上に重要なのは、ベバシズマブを併用したことでOSの中央値が前者で29.6か月になったのに対して後者は21.7か月(HR:0.51、p<0.001) と、死亡率をおよそ50%低下させたことである。また、頭蓋内病変と全身性病変の奏効率とも併用群により良好な結果が見られた(n=0.019、図2)。 脳転移巣が複数あるEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者には、EGFR TKIにベバシズマブを加えた併用療法が治療の選択肢になりうることを、以上の知見が示唆している。前向き研究のデータが必要になるが、ファーストライン治療にも同じことが当てはまるかもしれない。

図2: 頭蓋内病変の奏効率(左)と全身性病変の奏効率(右)をEGFR TKI+ベバシズマブの併用群とEGFR TKI単独群とで比較

図2: 頭蓋内病変の奏効率(左)と全身性病変の奏効率(右)をEGFR TKI+ベバシズマブの併用群とEGFR TKI単独群とで比較

参考文献:

  1. Grohé C et al., Efficacy and safety of nintedanib plus docetaxel in lung adenocarcinoma patients following treatment with immune checkpoint inhibitors: first results of the ongoing non-interventional study VARGADO (NCT02392455). ELCC 2019, abstract 1190
  2. Fukumura D et al., Enhancing cancer immunotherapy using antiangiogenics: opportunities and challenges. Nat Rev Clin Oncol 2018; 15(5): 325-340
  3. van der Woude LL et al., Migrating into the tumor: a roadmap for T cells. Trends Cancer 2017; 3(11): 797-808
  4. Seto T et al., Erlotinib alone or with bevacizumab as first-line therapy in patients with advanced non-squamous non-small-cell lung cancer harbouring EGFR mutations (JO25567): an open-label, randomised, multicentre, phase 2 study. Lancet Oncol 2014; 15(11): 1236-1244
  5. Naoki F et al., Phase III study comparing bevacizumab plus erlotinib to erlotinib in patients with untreated NSCLC harboring activating EGFR mutations: NEJ026. J Clin Oncol 36, 2018 (suppl; abstr 9006)
  6. Jiang T et al., EGFR TKIs plus bevacizumab demonstrated survival benefit than EGFR TKIs alone in EGFR-mutant NSCLC patients with multiple brain metastases. ELCC 2019, abstract 1890

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