巻頭言 – ESMO 2018

臨床医の皆様へ
Sanjay Popat, PhD, FRCP 英国・ロンドン 王立マーズデン病院 胸部腫瘍内科コンサルタント
© 著者所有 Sanjay Popat, PhD, FRCP 英国・ロンドン 王立マーズデン病院 胸部腫瘍内科コンサルタント
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次総会は、ヨーロッパで行われるがんの国際会議としてはトップクラスのものだ。ドイツ・ミュンヘンで10月19日から23日に開催した今年の会議は、「最適ながん治療を誰もが受けられるように」というテーマの下に行われた。がん治療に携わる専門医をはじめ、医療分野の政策立案者、患者支援団体など、世界各国からおよそ2万5000人が一堂に会し、がんに関する新しい知見を患者の治療に生かすためのイノベーションや主な課題について議論が交わされた。数多く存在している構造的な問題や財政面の課題がどの国でも足かせになっているため、それを克服するためには国同士の協力が必要になる。 本総会で報告のあった、肺がん関連の重要な新データの要旨を本号で紹介する。免疫療法だけでなく分子標的治療の分野で、ここ数年の間にめざましい進展があり、次々と行われる臨床試験で得た知見からは、異なる状況や環境に合わせた治療法が確立しており、それぞれの治療法に向いている患者は大きな効果を得ていることが浮き彫りになった。人数は限られているが特に重要とされている、ALK融合遺伝子を検出した患者の転帰を顕著に改善できるようになっている。異なる臨床試験でアジア人患者とそれ以外の患者の両方に臨床活性を示したアレクチニブなど、現在では複数の治療の選択肢がある。ブリガチニブとセリチニブには特に効果の持続性が見られるが、新薬も近々登場する。EGFR遺伝子変異陽性がんにはいくつかの治療薬があるが、どの順番でこれらの治療薬を投与するのかという重要な問題を本号で取り上げて、臨床試験成績を示しながら答えていくことにする。胸部悪性腫瘍を専門にする腫瘍内科医は3つの世代の治療薬から選ぶことができるが、獲得耐性のメカニズムとその後に治療への影響を考える必要がある。 肺がんへの免疫療法も今回の総会で注目を集めたテーマで、ネオアジュバント療法やⅢ期の根治治療、また緩和ケアにも効果のあったことがデータで示された。免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測の新規マーカーとしては、PD-L1発現量以外に遺伝子変異量にも注目が集まっており、さらなるデータも公開された。新たなデータや驚きを覚えるようなデータが数多くあったが、それが示すのは、肺がん克服への努力は加速度を付けて進んでいるということだ。