血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬とのシナジー効果に関する調

主立ったドライバー変異のない進行非扁平上皮NSCLCにとっては、免疫チェックポイント阻害薬が登場したことで、これまでの標準治療が変わりつつあり、血管新生阻害薬との併用でシナジー効果も期待できる。血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生を促す以外に、免疫細胞の機能を変化させ、がん微小環境が免疫抑制を引き起こすことがみられている[1~3]。こうしたメカニズムが免疫チェックポイント阻害薬への耐性獲得に関与している可能性はあるが、トリプルキナーゼ阻害薬のニンテダニブのような血管新生阻害薬でこの問題を克服できるかもしれない。血管が正常化し、免疫細胞から組織へのアクセスが改善することが基になって、がん微小環境が免疫を抑制しなくなることを血管新生スイッチが説明している[4]。

VARGADO試験:免疫チェックポイント阻害薬使用後のニンテダニブ

免疫チェックポイント阻害薬を投与している間に病勢が進行した場合の、次の治療に関する指標になりうるエビデンスが、ドイツで行われた非介入前向きVARGADO試験で得られた。同試験では、一般的なファーストラインの化学療法を行った後のニンテダニブとドセタキセルの併用療法を評価している。この試験では患者を3つのコホートに分けており、このうちのコホートBにはファーストライン治療として化学療法を、セカンドライン治療として免疫チェックポイント阻害薬投与を、サードライン治療としてニンテダニブ+ドセタキセル併用療法を行った。Grohéらが、コホートB(n=32)に関する最新の中間解析結果を本総会で発表した[5]。
サードラインのニンテダニブ+ドセタキセル併用療法後に中央値にして6.9か月追跡調査した結果、PFSの中央値は7.1か月になった。最良総合効果の判定を受けた患者は24人おり、そのうち50%が部分奏効の判定を受け()、病勢コントロール率は79%に達した。この中間解析結果は、免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療中に病勢が進行した患者への、ニンテダニブ+ドセタキセル併用療法の臨床的有用性を示していた。なお、この時点では奏効率(奏効期間)のデータは出そろっていなかった。免疫チェックポイント阻害薬の投与中に病勢が進行した患者には、その後に血管新生阻害薬を使用するという順番は理にかなっており、この治療には期待が持てるが、さらなる研究が必要だと著者らは述べた。
表:VARGADO試験でサードライン治療にニンテダニブ+ドセタキセル併用療法受けたコホートBの転帰

SENECA試験:ニンテダニブ使用後の免疫チェックポイント阻害薬

上記と同様な条件の、第Ⅱb相非盲検SENECA試験で得た成績を解析した。このリアルワールド研究はイタリアで行われたが、この研究ではファーストラインの化学療法後に病勢が進行した、進行非扁平上皮NSCLC患者を対象にドセタキセルの2通りの用法・用量を試し(33 mg/m2を初日と8日目、それ以降は週3回投与、75 mg/m2を初日とそれ以降は週3回投与)、並行してニンテダニブを連続経口投与した。病勢をコントロールする目的でニンテダニブの維持療法も行った。ファーストラインの化学療法後の無再発期間とドセタキセルの用法・用量にかかわらず、セカンドラインのニンテダニブ+ドセタキセル併用療法の有効性を最終解析結果(n = 170)で確認することができ、OSもPFSも両用法・用量群で差異はなかった[6]。
本総会での発表は、同試験でセカンドラインのニンテダニブ+ドセタキセル併用療法が免疫チェックポイント阻害薬を用いるサードライン治療に与えた影響が中心になっていた[7]。患者64人(全対象患者の37.6%)の病勢進行後の転帰を、サードライン治療に免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、n = 39)を使用した患者と、それ以外の薬剤(ゲムシタビン、ビノレルビン、エルロチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、n=25)を使用した患者とに分けて比較した。主要評価項目はPFS2とOS2にし、OS2はニンテダニブ+ドセタキセル併用療法の開始からサードライン治療中の病勢進行または死亡までとした。解析結果によると、 PFS2は免疫チェックポイント阻害薬群とそれ以外の薬剤群で差はなかったが(前者は10.78か月、後者は7.91か月、 HR:0.602、p=0.0821)、OS2は免疫チェックポイント阻害薬群で統計学的有意に延長していた(前者は14.33か月、後者は11.32か月、HR:0.537、p=0.0161、)。著者が指摘したように、解析対象になった患者数は限られているものの、ニンテダニブ+ドセタキセル併用療法から免疫チェックポイント阻害薬に切り替えた患者に明確な延命効果がみられた。血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬とのシナジー効果は、新たな治療アルゴリズムを考案する上で魅力的な組み合わせになるかもしれない。

図:ニンテダニブ+ドセタキセル併用療法の開始からサードライン治療中(免疫チェックポイント阻害薬またはそれ以外)の病勢進行または死亡までの期間
:ニンテダニブ+ドセタキセル併用療法の開始からサードライン治療中(免疫チェックポイント阻害薬またはそれ以外)の病勢進行または死亡までの期間

 

参考文献:

  1. Fukumura D et al., Enhancing cancer immunotherapy using antiangiogenics: opportunities and challenges.Nat Rev Clin Oncol 2018; 15(5): 325-340
  2. Khan KA & Kerbel RS, Improving immunotherapy outcomes with anti-angiogenic treatments and vice versa.Nat Rev Clin Oncol 2018; 15(5): 310-324
  3. Chouaib S et al., Hypoxia promotes tumor growth in linking angiogenesis to immune escape.Front Immunol 2012; 3: 21
  4. Grohé C et al., Nintedanib plus docetaxel in lung adenocarcinoma patients following treatment with immune checkpoint inhibitors: Preliminary efficacy and safety results of the non-interventional study VARGADO.J Clin Oncol 37, 2019 (suppl; abstr 9074)
  5. Grohé C et al., Efficacy and safety of nintedanib plus docetaxel in lung adenocarcinoma patients following treatment with immune checkpoint inhibitors: updated results of the ongoing non-interventional study VARGADO (NCT02392455).ESMO 2019, abstract 1505P
  6. Capelletto E et al., Final results of the SENECA (SEcond line NintEdanib in non-small cell lung CAncer) trial.Lung Cancer 2019; 134: 210-217
  7. Capelletto E et al., Post-progression survival for patients treated with docetaxel/nintedanib in the SENECA trial.ESMO 2019, abstract 1568P

 

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