徐々に進展する中皮腫および胸腺腫の 治療管理法

Oliver Gautschi, MD Luzerner Kantonsspital, Lucerne, Switzerland

Oliver Gautschi, MD, Luzerner Kantonsspital, Lucerne, Switzerland

切除できない悪性胸膜中皮腫への画期的な治療法の中では、どれが一番期待できるとお考えですか。

大変重要性の高い分野ですが、これまでに大きな進展は見られていません。そんな中、ランダム化比較試験のCheckMate-743試験でニボルマブとイピリムマブの併用療法を化学療法 と比較した最新成績を、Peters教授らがESMO 2021で発表しています[1]。PD-L1陽性や上皮型以外の中皮腫の患者さんで全生存期間が顕著に延びていましたが、全体で見ると延長効果は限られていました。スイスでは、この併用療法がPD-L1陽性や上皮型以外の中皮腫への治療法として承認を受けたばかりで、他のタイプだと化学療法が主流のままです。現在行われている臨床試験の成績しだいで、今後は他のタイプの患者さんにも免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を併用して治療すべきかが分かるでしょう。

胸腺腫と胸腺がんへの免疫チェックポイント阻害療法について、今のところどういったことが言えますか。

これらの希少がんについてですが、ほとんどの胸腺腫瘍は切除が可能だったり化学療法に反応したりします。切除不能な胸腺腫瘍患者さんには、化学療法や副腎皮質ステロイド剤、チロシンキナーゼ阻害薬といった全身療法を何ラインか行うのが一般的でして、Girard先生が、治療歴のあるヨーロッパの患者さんを対象にニボルマブを評価したNIVOTHYM試験の成績を発表しています。この試験では奏効率が12%と、胸腺腫瘍への抗PD-L1抗体薬の効果を確認できたのですが、患者さんに免疫関連有害事象が起きる可能性があるということで、非常に毒性が高いことが分かりました。私自身、臨床試験以外の環境で胸腺腫瘍に免疫チェックポイント阻害療法を行うことは、現時点で勧めていません。この試験はまだ被験者を募集中で、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を受けている第2コホートを評価しているところです。

REFERENCES

  1. Peters S et al., First-line nivolumab plus ipilimumab vs chemotherapy in patients with unresectable malignant pleural mesothelioma: 3-year update from CheckMate 743. ESMO 2021, LBA65
  2. Girard N et al., Efficacy and safety of nivolumab for patients with pre-treated type B3 thymoma and thymic carcinoma: Results from the EORTC-ETOP NIVOTHYM phase II trial. ESMO 2021, LBA66

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