標的治療による扁平上皮細胞癌のアプローチ

アファチニブで予想される有益性

EGFR変異状況は、扁平上皮癌(SCC)組織構造を持つNSCLC患者においては日常的な検査の対象ではない。。これは、このような腫瘍ではEGFR変異の発現率が低く、第1世代EGFR TKI治療に対する臨床的反応が芳しくないためである。Taniguchiらは、感受性EGFR変異のあるSCCの臨床的特徴を探るため、またアファチニブ治療の最適な適応を選択するために、連続症例441例をレトロスペクティブに見直し、そのうち23例についてEGFR変異状況を評価した[1]。
患者5例が、感受性を増加させるEGFR変異(エクソン19欠失とL858R変異)に関する検査で陽性を示した。その全員が女性で、喫煙歴はなかった。4例は通常の肺機能を有し、1例にのみが基礎疾患としてる肺気腫/線維症が見られた。患者4例はTKI治療を受け、ゲフィチニブとアファチニブが各2例の患者に投与された。ゲフィチニブはいかなる臨床的反応ももたらさなかったが、アファチニブ治療患者は良好な反応を示し、部分寛解に達した。解析時にゲフィチニブ治療患者は死亡していたが、アファニチブで治療した患者はまだ生存していた。結論として、SCC患者はアファチニブ治療から恩恵を受ける可能性があることを著者は指摘した。ベースライン特性を用いた患者選択は、アファチニブに高い感受性を持つ集団の特定に寄与すると思われた。

ErbB変異状況カウント

ErbBファミリー変異の頻度と変異状況と患者転帰との関係を立証する目的で、LUX-Lung 8臨床試験に参加した患者の遺伝子解析が行われた[2]。
LUX-Lung 8臨床試験では、SCC患者で2次治療として用いたアファチニブとエルロチニブを比較し、アファチニブ治療群で有意な有益性が明らかになった[3]。EGFR TKIに対する反応性の範囲を示すために、PFSが2ヶ月以上の患者に関して、組織サンプルをレトロスペクティブに選択し濃縮した。腫瘍遺伝子解析サブセットは245例の患者で構成され、そのうち132例はアファチニブ治療を受けた。このコホートはLUX-Lung 8臨床試験の全集団の代表であった。PFSとOSの両方がエルロチニブよりもアファチニブで良好な結果を示した。
解析が示した通り、患者53例(21.6%)には少なくとも1つのErbBファミリー変異があった。野生型とErbB変異陽性コホートの両方で、エルロチニブと比較してアファチニブが優れたPFS()とOSを示したが、この効果は変異群でより顕著であった。一方で、エルロチニブの場合、PFSとOSがErbB 変異状況に応じて異なることはなかった。アファチニブによって達成されたOSはErbB変異陽性群で10.6ヶ月、野生型集団で8.1ヶ月であった。
最大の有益性がHER3、HER4、そして特にHER2 変異で観察されたため、ErbB 変異患者においてエルロチニブを上回るアファチニブの顕著な有益性はEGFR によって引き起こされたものではないと思われた。ErbB増幅またはEGFR発現と臨床転帰の間に明らかな相関関係は見られなかった。次世代シーケンシングが、アファチニブまたはエルロチニブの投与により有益性が増大しうる肺SCC患者を特定するために役立つかもしれないと著者は結論付けた。アファチニブの予測マーカーとしてのErbB 変異、特にHER2変異の役割については、さらなる評価を必要とする。

図:ErbBファミリー変異状態と、LUX-Lung 8臨床試験においてアファチニブとエルロチニブによって得られた無増悪生存期間との関係

図:ErbBファミリー変異状態と、LUX-Lung 8臨床試験においてアファチニブとエルロチニブによって得られた無増悪生存期間との関係

アファチニブとペムブロリズマブの併用による継続中の臨床試験

EGFR変異NSCLCにおいて、EGFRシグナル伝達により免疫微小環境と腫瘍のPD-L1発現の両方が調節される可能性があることを示唆する前臨床的エビデンスがある[4, 5]。EGFR経路とPD-1経路の同時阻害が肺SCC治療の合理的で有望なアプローチであり、反応を改善し抵抗性の発現を遅らせるという仮定に基づいて、アファチニブは抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの組み合わせで現在試験されている[6]。LUX-Lung IO/ KEYNOTE 497という名称の非盲検単一群第II相臨床試験への被験者募集は2017年10月に米国、スペイン、フランス、韓国、トルコで始まった(NCT03157089)。客観的奏効が主要評価項目とされている。目標集団は50~60例の患者で構成される。

参考文献

  1. Taniguchi Y et al., The clinical features of squamous cell lung carcinoma with sensitive EGFR mutations.WCLC 2017, P2.03-017
  2. Goss GD et al., Impact of ERBB mutations on clinical outcomes in afatinib- or erlotinib-treated patients with SqCC of the Lung.WCLC 2017, P3.01-043
  3. Soria J-C et al., Afatinib versus erlotinib as second-line treatment of patients with advanced squamous cell carcinoma of the lung (LUX-Lung 8): an open-label randomised controlled phase 3 trial.Lancet Oncol 2015; 16: 897-907
  4. Chen N et al., Upregulation of PD-L1 by EGFR activation mediates the immune escape in EGFR-driven NSCLC: implication for optional immune targeted therapy for NSCLC patients with EGFR mutation.J Thorac Oncol 2015; 10: 910-923
  5. Akbay EA et al., Activation of the PD-1 pathway contributes to immune escape in EGFR-driven lung tumors.Cancer Discov 2013; 3: 1355-1363
  6. Riess AJ et al., Afatinib in combination with pembrolizumab in patients with stage IIIB/IV squamous cell carcinoma of the lung.WCLC 2017, P2.04-010

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