「迅速な効果を求める場合には化学療法が必要」

NSCLC治療に対する化学療法の相対的な重要性が変わりつつあるなか、新たな治療法という点で抗がん剤の効果をどのように高められるとお考えですか? 肺がん患者さんへの治療法は分子標的治療薬や免疫療法といった新薬の登場で、ここ数年の間に大きく改善しています。しかし、いずれのデータを見てもすべての患者さんに効果を現しているわけではないので、化学療法がまだ必要になるのです。仮に複数の治療ラインの薬剤に耐性を示すようになったときにドライバー変異が見つかり、全身への効果が求められると、化学療法が必要となることもあります。免疫療法を行う際、こういった患者さんの一部にはまったく効果がなかったり、すぐに効果が現れなかったりすることも目にしています。PD-L1の発現率が低い患者さんや、肺がんでつらい思いをしている、とりわけ重い症状のある患者さんには即効性が必要なので、化学療法に非常に助けられることがあります。 化学療法はいずれ、他の治療法に取って代わられるとお思いになりますか? そうは思いませんね。化学療法は放射線治療との併用でも必要になりますし、即効性が求められる患者さんにも必要になります。免疫療法にはあまり副作用がないように言われていて、グレード3や4の副作用の発現率を数字で見る限りは確かにそうです。ですが、化学療法の場合、グレード3や4の副作用というと好中球減少症がほとんどなので、患者さんにそれほど重い負担はかかりません。それに、こういった副作用は長く続きません。一方、免疫療法でまれに生じる副作用は長引くことがあり、患者さんが長い間苦しむおそれもあります。そのため、併用療法のパートナー、特に放射線治療の併用療法としてや、分子標的治療薬が使えない患者さんには、常に化学療法が必要になると思っています。 現段階では、他の治療法とどの抗がん剤の組み合わせが期待できそうですか? 化学療法と免疫療法の併用に期待しています。ただ、どの抗がん剤との組み合わせでも同程度の効果を発揮するのかが分かっていないので、どの抗がん剤が併用に最適なのかを判断しなければなりません。プラチナ製剤が入っていない化学療法を行えるかもしれないので、そうなると副作用の負担が軽くなることも考えられます。この点が研究の焦点になるかもしれません。

Anne-Marie C. Dingemans, MD, PhD, Department of Pulmonology, Maastricht University Medical Center, Maastricht, Netherlands

Anne-Marie C. Dingemans, MD, PhD, Department of Pulmonology, Maastricht University Medical Center (オランダ・マーストリヒト)

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「迅速な効果を求める場合には化学療法が必要」

肺がん患者さんへの治療法は分子標的治療薬や免疫療法といった新薬の登場で、ここ数年の間に大きく改善しています。しかし、いずれのデータを見てもすべての患者さんに効果を現しているわけではないので、化学療法がまだ必要になるのです。

進展型小細胞肺がん:免疫療法の効果のシグナル

小細胞肺がん(SCLC)患者の大部分は進展型の段階で(ED-SCLC)診断を受けている。通常はファーストライン治療のプラチナ製剤ベースの化学療法に良く反応するが、その効果はしっかりとしておらず、予後も良好とはいえない。NCCNガイドラインはセカンドライン以降の治療に、治験への参加、パフォーマンスステータスと無再発生存期間にもよるが全身療法、緩和療法を推奨している。

肺がん検診の精度を高める

一次予防ということではまず禁煙が目標ですが、患者さんが喫煙者や元喫煙者ということであれば、できる限り早期発見に努める必要があります。肺がんの早期発見に役立つということが現在分かっているのは低線量CTですが、この検査の特異度はもとより感度も改善させるために、分子バイオマーカーを加えることを目標にしています。

NTRK、ROS1、ALKの融合遺伝子陽性肺がんへの良好な成績が 判明

神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子は、乳児型線維肉腫のようなまれながんだけではなく、悪性黒色腫や大腸がん、肺がんといった一般的ながんも含め、多種多様ながんに発現している。肺がんでの発現率は0.2~3.3%と推測されている。

免疫療法:デュルバルマブおよびペムブロリズマブの作用が分析により明らかに

切除不能なⅢ期のNSCLC患者で、プラチナ製剤ベースの根治的放射線化学療法を受けた後に無増悪の状態が持続している患者にはデュルバルマブ療法を行うことが、国際共同第Ⅲ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であるPACIFIC試験で確立した。放射線化学療法の実施から6週間以内に、患者をデュルバルマブ10 mg/kgを隔週(Q2W)で最長12か月間投与する群(n=476)もしくは、プラセボを投与する群(n=237)にランダムに割り付けた。

EGFR阻害薬への現在の評価

第二世代の不可逆的ErbBファミリー阻害薬であるアファチニブが、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者へのファーストライン治療の標準薬になりうることが証明された。その根拠となったのは、LUX-Lung3および6の第Ⅲ相試験で見られた、プラチナダブレット療法に対する無増悪生存期間(PFS)と無増悪生存率(ORR)の顕著な改善である。