EGFR遺伝子変異陽性がん:エクソン20挿入陽性の肺がんに対する早期併用療法と新たな治療法

少数転移に対する初期の放射線療法とTKIの併用

少数転移がんとは、一般に転移病変が1~5個とされている。進行は原発部位で起こることが最も多いため、積極的な局所治療によってさらに転移するのを防ぐことができると推測される。これを根拠に、中国で実施された第III相非盲検ランダム化比較試験のSINDAS試験では、少数転移があるEGFR 遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象に体幹部定位放射線治療(SBRT)とEGFR-TKI治療の同時併用を検討した[1]。患者の状態はひとつの臓器に転移病変が2個以下であり、転移病変合計数は最大5個とした。試験治療群(n = 68)では、SBRTを線量25~40 Gy/5回として照射した。一方、対照群の患者(n = 65)はTKI治療(ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ)のみを受けた。<7P>

主要評価項目はPFSとした。ここでは、併用療法によって進行または死亡のリスクが38%減少し、有意な治療効果が認められた(ハザード比 0.618、p
< 0.001、図1)。また、放射線治療を追加することによってOSが有意に延長した(ハザード比 0.682、p < 0.001)。同時に、発疹、重度肝損傷、間質性肺炎、食道炎および病的肋骨骨折などグレード3の有害事象の発現率については、治療群間に有意な差はなかった。全体として、以上の結果から、少数転移があるNSCLCに対してはSBRTによる地固め療法が有効であると仮定した以前の仮説が確認された。著者らは、このような臨床状態に対する標準的な治療選択肢として、初期の積極的な局所療法を第III相大規模試験でさらに検討する必要があると結論づけた。

図1:少数転移のEGFR 遺伝子変異陽性肺がんに対する放射線療法とEGFR-TKI治療の併用とTKI治療単独との無増悪生存期間に関する比較

図1:少数転移のEGFR 遺伝子変異陽性肺がんに対する放射線療法とEGFR-TKI治療の併用とTKI治療単独との無増悪生存期間に関する比較

一次治療でのTKIの2剤併用療法:オシメルチニブとゲフィチニブ

第一世代EGFR-TKIのゲフィチニブと第三世代EGFR-TKIのオシメルチニブが、 EGFR 耐性変異でも異なる部位に主な二次変異を生じること(ゲフィチニブはT790M、オシメルチニブはC797S)は周知のとおりである。それぞれの薬剤は、もう一方の薬剤で観察される主な耐性機序に対する効果がある。両薬剤を併用することによって治療による奏効が延長される可能性があるという仮定の下に、EGFR 遺伝子変異陽性(EGFR L858R変異またはエクソン19欠失)のIV期NSCLC患者を対象に、一次治療レジメンとしてゲフィチニブとオシメルチニブの併用を第I/II相試験で現在評価しているところである。

ASCO年次総会で発表された解析では、対象患者は27人であった[2]。そのほとんどが白人(81%)であり、患者の半数以上に喫煙歴がなかった。中枢神経系(CNS)病変について治療歴があるか、無症候性であれば認められた。患者の33%に脳病変の治療歴があり、26%が脳病変に対して未治療であったが、患者の41%にはCNS転移が認められなかった。主要評価項目は最大耐量および治療の実施可能性とし、治療計画は28日サイクルの併用療法を6サイクル以上実施することとした。用量漸増期間中、ゲフィチニブ250㎎とオシメルチニブ80㎎で用量制限毒性の発現はなく、有害事象はEGFR-TKI治療に関して既知の毒性プロファイルと一致していた。最もよくみられた有害事象は発疹(96%)、下痢(85%)、乾燥皮膚(70%)であった。間質性肺炎を起こした患者はいなかった。

治療実施可能性の評価項目については、用量漸増期間中に患者の81.5%が6サイクル以上の治療を受けたことによって達成された。結果として、奏効率は88.9%、病勢コントロール率は100%であった。PFS中央値は22.5カ月であったが、OSデータと同様に、このデータもまだ最終的なものではない。さらに併用療法は、EGFR変異アレルの血漿クリアランスを迅速かつほぼ全体にわたって誘導し、2週間後には88%の患者が検出不能な変異状態を示した。獲得耐性については、病勢進行時に実施した次世代シークエンシングによれば、7人の患者にはEGFR遺伝子の既知の部位に病原性の二次変異は認められなかった。また、組織学的な変化がみられた患者もいなかった。

試験担当者らは要約として、観察されたORRは88.9%であり、オシメルチニブによる一次治療で得られた奏効率と同等であることを指摘した。PFSとOSのデータをさらに解析することにより、一次治療でEGFR-TKIを2剤併用することによる臨床的有用性に理解が深まるであろう。

EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を伴うNSCLCに対するモボセルチニブ

EGFR 遺伝子の活性化変異のうち、エクソン20挿入はNSCLCのなかでも治療が困難で予後不良と関連しているタイプのひとつである。このような変異を伴う腫瘍は一般にEGFR-TKI治療に感受性がなく、プラチナベースの化学療法を開始したあとに進行すると治療選択肢が限られている。

新規のEGFR-TKIであるモボセルチニブ(TAK-788)は、エクソン20挿入を伴う肺がんに対する治療薬として現在開発段階にあるものの、EGFR 遺伝子エクソン20挿入がある転移性NSCLC患者がプラチナベースの化学療法の治療中または治療終了後に進行した場合の治療として、米国食品医薬品局によりブレイクスルー・セラピー指定をすでに受けている。

直接比較によるエビデンスがないなかで、Hornらは第I/II相単群試験で得られたモボセルチニブの臨床試験データと実臨床での治療成果を間接的に比較した。 [3].疾患の自然史とエクソン20挿入がある患者の治療パターンを理解するために生成された実臨床データは、米国Flatiron Health社のHER由来の非同定データベースから取得した。進行中の第I/II相試験では、モボセルチニブを1日160mg経口投与している。解析では、EGFR 遺伝子エクソン20挿入を有する局所進行または転移性のNSCLC患者99人(モボセルチニブ群 n = 28、実臨床患者群 n = 71)を対象としており、二次治療に関するデータが報告された。実臨床の患者集団に対する治療には、化学療法、免疫療法、EGFR-TKI治療および各治療の併用療法が用いられた。また、化学療法とEGFR-TKI治療またはそのいずれかをモノクローナル抗体と組み合わせた併用療法も使用された。免疫療法が29.6%と最も多く、次いでEGFR-TKI治療(25.4%)、ドセタキセル(10.0%)が続いた。

ベースラインの傾向は同じであったが、モボセルチニブは対照レジメンよりも良好な成績を示した。モボセルチニブ群の患者は優れたORR(モボセルチニブ群 43%、対照群 14%、p = 0.003)とPFS(モボセルチニブ群 7.3カ月、対照群 3.7カ月、p=0.0235、図2)を達成した。EGFR 遺伝子エクソン20挿入を伴うNSCLC患者を対象に、一次治療でモボセルチニブとプラチナベースの化学療法を比較する試験が現在参加者を募集している(NCT04129502)。

図2:EGFR 遺伝子エクソン20挿入を有するNSCLC患者に対するモボセルチニブを実臨床での他の治療結果と比較したときの無増悪生存期間の改善

図2:EGFR 遺伝子エクソン20挿入を有するNSCLC患者に対するモボセルチニブを実臨床での他の治療結果と比較したときの無増悪生存期間の改善

ポジオチニブ:ZENITH20試験のコホート1

上記と同様に、EGFR 遺伝子およびHER2 遺伝子のエクソン20挿入を標的とした経口の非可逆的EGFR-TKIであるポゾチニブが開発されている。ASCO年次総会では、Leらが第II相多施設共同ZENITH20試験のコホート1の結果を発表した。この試験では、治療歴のあるNSCLC患者と未治療のNSCLC患者を含む計7つのコホートでポゾチニブを評価した[4]。脳転移は病変が安定していれば認められた。

コホート1には、治療歴のある患者でポゾチニブによる治療を受けたEGFR 遺伝子エクソン20挿入陽性患者88人が含まれていた。この患者群では、TKIによるORRは19.3%、病勢コントロール率(DCR)は80.7%であった。奏効期間の中央値は7.4カ月であった。治療歴による奏効率の評価では、三次治療以上の治療を受けていた場合、一次治療(18.9%)や二次治療(16.7%)と比較して、ORRが若干ではあるがさらに高かったこと(22.2%)が示された。試験担当医師らは、複数の前治療を受けていても、試験治療に対する反応を損なうことはないと結論づけた。EGFR 遺伝子挿入の位置は治療効果に一定の影響を与えていた。エクソン20のループ近くの挿入が最も多く(50%以上)、この変異がある患者では、ポジオチニブによる効果が最も認められた。

評価可能な患者の84 %に腫瘍縮小が認められた。無増悪期間は中央値で4.1カ月であった。ベースライン時点で12人の患者に安定したCNS病変があった。そのうち、83%の患者では治療中に進行が認められず、ベースラインで脳病変のない患者のうち、新たにCNS転移を発症したのは3%にとどまった。よくみられたグレード3の治療関連有害事象は、下痢(25%)、発疹(28%)、口内炎(9%)、耳下腺炎(6%)であった。

EGFR-MET–バイスペシフィック抗体アミバンタマブ

EGFR 遺伝子変異陽性NSCLCに広く使用可能な新しい治療が、EGFR-METバイスペシフィック抗体のアミバンタマブ(amivantamab)である。この抗体は、EGFR 遺伝子の活性化変異と耐性変異の両方およびMET 遺伝子の変異・増幅を標的とする。この薬剤は、キナーゼ活性部位を標的とするのではなく、受容体の細胞外ドメインに結合することにより、EGFR 遺伝子とMET 遺伝子の異常なシグナル伝達を阻害する。

アミバンタマブは、進行中の第I相CHRYSALIS試験で、EGFR 遺伝子の活性化変異またはMET 遺伝子の変異または増幅を伴う転移性または切除不能なNSCLCの患者を対象に評価されているところである。Park らは、第II相試験の推奨用量 1,050mg(体重80kg以上の患者では1,400mg)を第1サイクルでは週1回、その後は隔週で静脈内投与した、EGFR 遺伝子エクソン20挿入がある患者について中間結果を報告した[5]。安全性の評価対象集団は50人、奏効の評価可能集団は39人であった。奏効の評価可能群では、試験参加前に転移性であった29人(74%)がプラチナベースの化学療法を受けていたが、6人は治療歴がなく、4人はEGFR-TKIおよびVEGF阻害薬またはそのいずれかを含む治療歴があった。

未治療の患者とプラチナ製剤による治療後の患者の両方で奏効が観察された。ORRは全体で36%、プラチナ製剤による治療後のコホートで41%であった(図3)。全集団では患者の67%に臨床的効果が得られたが、プラチナ製剤による治療後の患者群では72%であった。治療の効果は、同定された13の異なるEGFR 遺伝子エクソン20挿入変異のすべてに観察された。奏効は持続的であり、奏効期間の中央値は評価可能な全対象患者で10カ月、プラチナ製剤による治療後の患者では7カ月であった。PFS中央値は前者が8.3カ月、後者が8.6カ月であった。

アミバンタマブの安全性プロファイルは管理可能であり、全グレードで最も多かった有害事象は発疹、輸液関連反応、爪囲炎であった。毒性はほとんどがグレード1と2であった。また、有害事象による用量の減量が10%、治療中止は6%とまれであった。このデータに基づき、アミバンタマブは、プラチナベースの化学療法を受けた後に進行したEGFR 遺伝子エクソン20挿入変異陽性のNSCLC患者の治療薬としてFDAのブレイクスルー治療指定を取得した。

図3:CHRYSALIS試験:全集団およびプラチナ製剤による治療後のコホートでのアミバンタマブの奏効率

図3:CHRYSALIS試験:全集団およびプラチナ製剤による治療後のコホートでのアミバンタマブの奏効率

もうひとつの選択肢としての高用量オシメルチニブ

EGFR 遺伝子エクソン20挿入を伴うNSCLCに対するオシメルチニブなどの第三世代EGFR-TKIの効果は不明である。前臨床研究では、このような薬剤の治療濃度域が良好であったことから、臨床的に達成可能な用量で阻害できる可能性が示唆されている[6]。このため、第II相単群試験のEA5162試験では、すでに一次治療以上を受けたEGFR 遺伝子エクソン20挿入がある進行NSCLC患者17人を対象に、オシメルチニブ160mgを投与して評価した[7]。注目したいのは、この試験で使用された用量は承認されたオシメルチニブの用量の2倍であったことである。

オシメルチニブ160mg/日は、エクソン20挿入変異陽性NSCLCを対象に臨床効果を示し、ORRは24%であったことが確認された。患者の82%が病勢コントロールを達成した。この時点で奏効期間の中央値は未到達であり、PFS中央値は9.6カ月であった。有害事象は以前の報告と一致していた。最も多かった毒性として、下痢、疲労、血球減少および食欲不振が発現し、グレード3以上の有害事象発現率は低かった。皮膚毒性はグレード1の有害事象に限定されていた。1人の患者にグレード4の呼吸不全が認められ、別の患者はグレード3の貧血のために試験治療を中止した。EGFR 遺伝子エクソン20挿入がある患者を対象としたオシメルチニブの試験がさらに計画されている。

参考文献

  1. Wang XS et al., First-line tyrosine kinase inhibitor with or without aggressive upfront local radiation therapy in patients with EGFRm oligometastatic non-small-cell lung cancer: interim results of a randomized phase III, open-label clinical trial (SINDAS). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 9508)
  2. Rotow JK et al., Concurrent osimertinib plus gefitinib for first-line treatment of EGFR-mutated non-small cell lung cancer (NSCLC). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 9507)
  3. Horn L et al., Indirect comparison of mobocertinib (TAK-788) vs real-world data outcomes in refractory NSCLC with EGFR exon 20 insertions. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 9580)
  4. Le X et al., Poziotinib shows activity and durability of responses in subgroups of previously treated EGFR exon 20 NSCLC patients. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 9514)
  5. Park K et al., Amivantamab (JNJ-61186372), an anti-EGFR-MET bispecific antibody, in patients with EGFR exon 20 insertion (Exon20ins)-mutated non-small cell lung cancer (NSCLC). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 9512)
  6. Hirano T et al., In vitro modeling to determine mutation specificity of EGFR tyrosine kinase inhibitors against clinically relevant EGFR mutants in non-small-cell lung cancer. Oncotarget 2015; 6(36): 38789-803
  7. Piotrowska Z et al., ECOG-ACRIN EA5162: A phase II study of high-dose osimertinib in NSCLC with EGFR exon 20 insertions. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 9513)

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