序文
Fred R. Hirsch, MD, PhD IASLC の CEO 米国コロラド州デンバー コロラド大学薬科大学院教授
親愛なる皆さん、
この10年間を通じて非小細胞肺癌の治療は、最新の開発についていくことが医師にとっての課題になるような、きわめて大きな進歩を遂げてきました。肺癌治療に関わる医療従事者に継続的な教育を施す目的で、International Association for the Study of Lung Cancer (国際肺癌学会、IASLC)のWorld Conference on Lung Cancer(世界肺癌学会議、
WCLC)が現在、年1回開催されています。100ヶ国以上からの代表者が参加することで、本会議は肺癌および胸部悪性腫瘍の分野でトップの国際的なフォーラムになりました。
10月15日~18日に、第18回WCLCが日本の横浜で開催されました。プログラムには2,000件以上の口演、口演付きポスター発表、およびポスター抄録発表が組み込まれ、400名以上の著名な講演者、セッション議長、および抄録討論者がその知識を聴衆と共有しました。ある意味で、患者の転帰を実際に改善することに成功してきた最近の肺癌研究の多くがアジア諸国で行われていることが会議開催地の選択に反映されているのかもしれません。アジアで行われた臨床試験は、EGFRまたはALKチロシンキナーゼ阻害剤などの標的療法やニボルマブなどによる免疫療法の開発のほか、
S1、イリノテカンおよびオキサリプラチンを含む細胞毒性薬の導入にも大いに貢献してきました。特に肺癌では、東アジアがこの数年にわたって癌研究の拠点に進化してきました。
メモ-イン・オンコロジーのWCLC2017号では、胸部手術から標的療法、免疫療法、化学療法、中皮腫治療までに及ぶさまざまなテーマを取り上げます。全体として、この会議で発表されたデータは、確立された介入治療に適用される新しい標的、新しいバイオマーカー、新たな方法が科学的研究の焦点になるに従って、これらの分野すべてで着実な進歩が見られていることを浮き彫りにしています。もちろん、肺癌のスクリーニングは、肺癌を管理可能な疾患に変えることに大いに貢献する可能性があるもう1つの重要な分野です。全国的スクリーニングプログラムがさまざまな国で現在継続中であり、その規模が大きいことから未解決の問題に対する答が得られるかもしれません。早期発見、さらなる医薬品開発のほか、革新的な組み合わせと信頼できるバイオマーカーの特定によって、近い将来に治癒が多くの患者にとっての実現可能な目標になることを期待します。
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化学療法:新しいアプローチ、新しいセッティング
最新ガイドラインでは、完全切除したリンパ節転移(ステージII~IIIA)NSCLC患者に対し術後プラチナベース化学療法が推奨されている。しかし、生存期間の転帰は依然として限定されており、治療遵守は他の腫瘍での補助療法よりも低い。さまざまな化学療法レジメンの間での直接的な比較は行われていない。
悪性中皮腫:ニンテダニブとチェックポイント阻害薬に関する最新データ
悪性胸膜中皮腫(MPM)は、未治療のままだと生存期間中央値が7~9ヵ月となる浸潤性腫瘍である。切除不能MPM患者の最先端の標準治療はシスプラチンとペメトレキセドのる組み合わせ併用療法で構成され、OS中央値が約1年となる。
標的治療による扁平上皮細胞癌のアプローチ
EGFR変異状況は、扁平上皮癌(SCC)組織構造を持つNSCLC患者においては日常的な検査の対象ではない。。これは、このような腫瘍ではEGFR変異の発現率が低く、第1世代EGFR TKI治療に対する臨床的反応が芳しくないためである。
免疫療法:兆しが見えた新規バイオマーカーとピボタル床試験からのニュース
再発小細胞肺癌(SCLC)の患者については、使用できる治療選択肢が限られている。CheckMate 032試験では、1回以上のプラチナベースの化学療法レジメンによる治療を事前に受けたSCLC患者のPD-L1非選別コホートで抗CTLA-4抗体イピリムマブとの併用または併用なしで抗PD-1抗体ニボルマブを評価した。
抗EGFR薬治療のさらなる使用:1次治療以降の治療
一般に獲得抵抗性は一次EGFR TKI療法の続に生じ、その最も一般的な機序はゲートキーパーT790M変異である。第3世代の不可逆性EGFR TKIであるオシメルチニブが、この変異を保有する腫瘍がある患者の治療に認可されている。
「肺癌のより良い管理に向けて着実に進歩しています」
今年のWCLCのモットーは「肺癌を制圧する相乗効果」です。肺癌患者に最適な治療を行うために、どのような種類の相乗効果が必要とされるのでしょうか? ある意味では、相乗効果は集学的チームアプローチの別の言い方ですが、この用語「集学的」は必ずしも医師に限定するものではありません。