再発悪性中皮腫患者への新しい治療選択肢・ニボルマブ
再発悪性中皮腫患者のOSの改善効果を示した第Ⅲ相ランダム化比較試験は最近まで存在していなかった[1、2]。第Ⅱ相試験の3試験でニボルマブ単独療法のPD-1阻害作用が認められたことで、ニボルマブが日本で承認を受けた[3~5]。 CONFIRM試験は、再発中皮腫患者を対象にPD-1阻害薬の有効性と安全性を調べた初の第Ⅲ相プラセボ対照ランダム化比較試験である。標準治療の化学療法を複数回受けた患者を、1サイクルを14日として1日目にニボルマブ240 mgを投与する群(n=221)かプラセボ群(n=111)のどちらかにランダムに割り付けた。両群とも患者の約60%がサードライン治療まで受けており、腫瘍細胞中のPD-L1陽性率が1%以上の判定を受けた患者はニボルマブ群では37%、プラセボ群では29%になった。OSおよび治験担当医師が判定するPFSを主要評価項目にし、Fennellらが暫定的な成績を報告した[6]。
OSの差はほぼ3か月
この試験は主要評価項目を満たす結果となった。ニボルマブ群では死亡リスクの減少率が28%になり、OSの中央値はこの群が9.2か月、プラセボ群が6.6か月(HR:0.72、p=0.018)、 12か月時点で生存していた患者の割合は前者で39.5%、後者で26.9%、PFSの中央値は3.0か月と1.8か月(HR:0.61、p<0.001)、12か月時点のPFSは14.5%と4.9%になった。TPS別のサブグループ解析からは、これがOSの予測因子にならないことが示された。ニボルマブが上皮型中皮腫患者のOSを統計学的有意に延長させたのに対して(前者は9.4か月、後者は6.6か月、HR:0.71、p=0.021)、それ以外の組織型の患者はどちらの群でも同じような転帰になっていため(5.9か月と6.7か月、HR:0.79、p=0.572)、組織型とOSとの間の相関性が見て取れた。
良好な安全性プロファイル
治療期間の中央値はニボルマブ群が84日、プラセボ群が43日に、グレード3以上のAEの発現率はそれぞれ45%と42%、グレード3以上の重篤なAEは36%と39%になり、重篤なAEにより各群で3.6%と5.3%の患者が死亡した。同試験の成績からは、再発中皮腫患者へのニボルマブ療法の安全性および有効性の高さが認められた。以上の事を踏まえて、同患者にはPD-1阻害薬を新しい治療の選択肢として検討すべきだと著者らは強調した。
参考文献
- Popat S et al., A multicentre randomised phase III trial comparing pembrolizumab versus single-agent chemotherapy for advanced pre-treated malignant pleural mesothelioma: the European Thoracic Oncology Platform (ETOP 9-15) PROMISE-meso trial. Ann Oncol 2020; 31(12): 1734-1745
- Krug LM et al., Vorinostat in patients with advanced malignant pleural mesothelioma who have progressed on previous chemotherapy (VANTAGE-014): a phase 3, double-blind, randomised, placebo-controlled trial. Lancet Oncol 2015; 16(4): 447-456
- Scherpereel A et al., Nivolumab or nivolumab plus ipilimumab in patients with relapsed malignant pleural mesothelioma (IFCT-1501 MAPS2): a multicentre, open-label, randomised, non-comparative, phase 2 trial. Lancet Oncol 2019; 20(2): 239-253
- Quispel-Janssen J et al., Programmed death 1 blockade with nivolumab in patients with recurrent malignant pleural mesothelioma. J Thorac Oncol 2018; 13(10): 1569-1576
- Okada M et al., Clinical efficacy and safety of nivolumab: results of a multicenter, open-label, single-arm, Japanese phase II study in malignant pleural mesothelioma (MERIT). Clin Cancer Res 2019; 25(18): 5485-5492
- Fennell D et al., Nivolumab versus placebo in relapsed malignant mesothelioma: preliminary results from the CONFIRM phase 3 trial. WCLC 2020, PS01.11
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