小細胞肺がんへの延命効果

進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者の予後の悪さを考えると、効果の高い第一選択薬が強く求められる。国際共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較IMpower133試験の第Ⅰ相試験と第Ⅲ相試験は、ES-SCLCに対して抗PD-L1抗体薬のアテゾリズマブとカルボプラチン+エトポシドの併用療法に、プラセボと化学療法の組み合わせを上回る延命効果があったことを示した初の臨床試験である。

まれなドライバー変異であっても重要性は高い

NRG1融合遺伝子変異が生じることは比較的少ないのですが、あらゆるタイプのがんで形質転換を起こさせるものです。すべてのタイプのがんで発生頻度は1%未満にすぎず、NRG1融合遺伝子の発生頻度は0.2%程度という報告もあります。非常にまれにしか発生しませんが、大変問題になるドライバー変異のひとつと言えます。

CNS病変の存在は治療成功の妨げにならない

転移性NSCLC患者の約35%に脳転移を認めており、これがさまざまな神経症状の原因になるだけではなく、予後不良の要因にもなっている。一方で、診断時に生じていた脳転移による神経症状が予後に及ぼす影響については、ほとんど知られていない。ウィーンで行われている脳転移に関する登録データで、新たにこの診断を受けた実際のNSCLC患者1,608人分のデータを解析し、この影響を評価した。

ALK、ROS1、NTRK、NRG1といったまれな遺伝子変異陽性肺がんへの画期的な検査法

分子標的治療には遺伝子検査が不可欠だが、組織の採取や組織診が臨床現場での足かせになっていることが知られている。だが、血液検体を用いた次世代シーケンス(NGS)解析で一部の難問を克服できるようになるかもしれない。進行NSCLC患者を対象に、血液バイオマーカーとファーストライン治療に用いる分子標的治療薬もしくは免疫チェックポイント阻害薬の臨床活性との相関性を前向きに評価するため、第Ⅱ相・第Ⅲ相国際共同マルチコホートBFAST試験を行った。

血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬とのシナジー効果に関する調

主立ったドライバー変異のない進行非扁平上皮NSCLCにとっては、免疫チェックポイント阻害薬が登場したことで、これまでの標準治療が変わりつつあり、血管新生阻害薬との併用でシナジー効果も期待できる。血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生を促す以外に、免疫細胞の機能を変化させ、がん微小環境が免疫抑制を引き起こすことがみられている。

EGFR TKIと血管新生阻害薬を併用するフロントライン治療

EGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療を受けていない患者には、第一世代のEGFR TKIに抗VEGF抗体のベバシズマブを追加することでPFSが延長し、毒性プロファイルも許容可能なレベルであることが示された[1、2]。第Ⅲ相多施設共同非盲検ランダム化比較ARTEMIS (CTONG 1509)試験は、中国人のNSCLC 患者を対象にベバシズマブとエルロチニブの併用療法を調べた、初の第Ⅲ相試験である。

EGFR遺伝子変異陽性肺がん:あらゆる治療ラインにわたる至適治療にかかわる問題点

EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者へのフロントライン治療には、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を用いるのが一般的である。三世代のTKIが使用できるのでさまざまな選択肢があるが、どの順番で使用すればいいのか現段階では明らかになっていない。そこで、第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較FLAURA試験で、第三世代のEGFR TKIのオシメルチニブを、第一世代のEGFR TKIのゲフィチニブとエルロチニブとフロントライン治療に用いて比較した。

非小細胞肺がんへの免疫チェックポイント阻害薬:広がる選択肢

第Ⅲ相ランダム化比較IMpower110試験では、腫瘍の組織型を問わず、Ⅳ期のPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者にファーストライン治療として投与した抗PD-L1抗体薬のアテゾリズマブの有効性などを評価している。アテゾリズマブ群には病勢が進行するまでアテゾリズマブを投与し、対照の化学療法群にはプラチナ製剤ベースの化学療法を組織型に応じて4~6コース行った。

巻頭言 – 臨床医の皆様へ

肺がんは今でもあらゆる場面で困難をもたらしていますが、新規薬剤クラスに属する薬剤同士の有効な併用療法や発現頻度の高いドライバー変異を標的にした治療法など、重大な節目に達しているように思います。今年の9月27日から10月1日にかけてスペインのバルセロナで行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会でも、免疫チェックポイント阻害薬がまたしても議題の中心になりました。

Go to Top