若年性肺がん患者における体細胞ゲノムの変異
若年成人の肺がんは比較的まれであるが、異なる生物学を持つ独特のサブグループであると考えられている[1]。40歳以下の患者では、肺がんの発生率は4%であり[2]、45歳以下の患者では5.3%である[3]。特徴としては、女性は男性よりも影響を受けやすく、腺がんが蔓延し、疾病ステージは診断時には既に進行していることが多い。もちろん、これらの患者は通常、積極的な治療を受ける。
若年性肺がん患者の最近の研究によれば、この集団では、EGFRおよびALK変異などの治療可能な遺伝子標的が他の患者よりも多くみられる[2]。HER2およびROS1変異に関してもその傾向があった。Hsuらは、EGFR遺伝子変異の有無にかかわらず若年性肺がん患者の生存率に有意差は認められなかったと示した[4]。しかしながら、より広範なゲノム上の様々な特徴および関連する発がん経路は、まだ完全には理解されていない。
TCGA重複遺伝子
このため、Wuらは、 45歳以下(中央値40歳、31-45歳まで)の27人の中国人非小細胞肺がん患者を対象に、正常な血液DNAとホルマリン固定パラフィン包埋ゲノムDNAを基に全エクソームシーケンスを行った[5]。18人が腺がんの患者で、21人は女性だった。全員、喫煙したことがないか、試験参加のときには喫煙していなかった。試験担当医らは、腺がん(AD)では体細胞変異体288個を、扁平上皮がん(SC)では体細胞変異151個を同定した。ゲノム変異のうち、ADおよびSC の両方でフレームシフト変異およびミスセンス変異が優勢であった(図)。両方の組織型において、挿入または欠損多型(インデル)が約60%、SNPは約40%で存在した。両コホートにおける変異遺伝子の大部分は、若年非小細胞肺がんで得られた変異遺伝子と重複した。各疾患サブタイプは、がんゲノムアトラス(TCGA)コホートと重複した(すなわち、94 AD変異遺伝子のうち86 AD変異遺伝子および48SC変異遺伝子のうち41 SC変異遺伝子)。
予測されたインパクトの高い変異のある遺伝子を経路解析のために選択し、組織学的に異なる候補経路を体系的に変化させた。例えば、ERK/MAPKシグナル伝達およびPTEN細胞周期停止は、ADでは変化したが、SCでは変化しなかった。逆に、SCの中では特にTrk/PI3Kシグナル伝達およびADPリボシル化/DNA修復にはこれが当てはまるが、ADでは当てはまらなかった。若年患者の変異遺伝子および経路を高齢者のTCGAコホートと比較するために、さらにバイオインフォマティクス解析が進行中である。
図: 腺がん(AD)または扁平上皮がん(SC)の若年性肺がん患者にみられる遺伝子変異のタイプ
参考文献
- Luo W et al., Characteristics of genomic alterations of lung adenocarcinoma in young never-smokers.Int J Cancer 2018 Apr 18. doi: 10.1002/ijc.31542.[Epub ahead of print]
- Sacher AG et al., Association between younger age and targetable genomic alterations and prognosis in non-small-cell lung cancer.JAMA Oncol 2016; 2(3): 313-20
- Zhang J et al., Multicenter analysis of lung cancer patients younger than 45 years in Shanghai.Cancer 2010; 116(15): 3656-3662
- Hsu CL et al., Advanced non-small cell lung cancer in patients aged 45 years or younger: outcomes and prognostic factors.BMC Cancer 2012; 2012 Jun 13; 12: 241
- Wu X et al., Whole exome sequencing (WES) to define the genomic landscape of young lung cancer patients (pts).J Clin Oncol 36, 2018 (suppl; abstr 12005)
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