巻頭言
Martin Reck, MD, PhD
胸部腫瘍学部門
Airway Research Center North, German Center of Lung Research
Lung Clinic Grosshansdorf
ドイツ グロースハンスドルフ
臨床医の皆様へ
2020年に引き続き、2021年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会もオンラインで開催され、6月4日から8日にかけて、科学プログラムと教育プログラムの両方が行われました。2,500以上の発表演題の中では、肺がんの分野の研究成果が注目を集めていました。免疫チェックポイント阻害療法は、治療ラインを超えたケアの連続体の中で前進しており、現在、早期肺がんにおいて新たな基準を定義しています。完全切除を行った患者を対象としたIMpower010試験では、ステージII-IIIAのPD-L1発現を伴うNSCLCにおいて、PD-L1阻害療法が新たなアジュバントの選択肢として確立されました。以前、PACIFIC試験に基づいて、別のPD-L1阻害剤が、化学放射線療法に反応する切除不能なIII期腫瘍の患者さんの治療をすでに変化させています。ここでは、新たな研究結果により、持続的な効果が明らかになりました。
また、治療の個別化だけでなく、それに伴って出現する耐性への対応も含めた標的療法についても、重要なデータが得られています。EGFR変異肺がんでは、投与された薬剤の種類に応じた様々な耐性メカニズムが確認されています。これに対して行えることは、HER3のような別の異常を標的にすることや、耐性メカニズムと主要標的の両方を阻害するレジメンを使用することです。CodeBreaK100試験の探索的解析によると、STK11やKEAP1などの体細胞変異を不活化することも、最初からKRAS阻害の活性に関する予測有効性があることが示されています。免疫療法と標的療法はより合わさる可能性があり、それはASCO 2021で報告された様々な分析結果が示すように、特にKRAS変異の場合に当てはまります。チェックポイント阻害剤や標的チロシンキナーゼ阻害剤だけでなく、免疫支持性の腫瘍微小環境を作るための抗血管新生剤の使用という点でも、シーケンシングは重要な役割を果たします。
さらに、小細胞肺がんの分子レベルでの特性が明らかになってきており、遺伝子の発現やバイオマーカーの違いが、将来的に治療上の弱点となる可能性があります。当面は、アンメットメディカルニーズの高い再発SCLC患者を対象に、二重特異性T細胞誘導療法などの革新的な戦略が試されます。個々の患者レベルでの有効性と忍容性を向上させるために医療設備や方法が日々改良されています。今後の学会で、日々の患者ケアをさらに向上させる画期的な技術に関する取り組みについての発表を期待しています。
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