臨床試験の選択基準の緩和:われわれにとっての利点

米国臨床腫瘍学会(ASOC)ならびに非営利団体であるFriends of Cancer Researchは2017年に、臨床試験の患者集団により現実を反映させ、そこで得た知見をより一般化できるように、選択基準を緩和する努力が必要だとする共同声明を出した[1]。選択基準を緩和すればより多くの患者が臨床試験に参加でき、データの収集も進むため、その結果、新規の治療法の登場を促すことにもつながる。

小細胞肺がん:セカンドライン治療の改善

再発性小細胞肺がん(SCLC)患者への治療の選択肢は非常に限られている。プラチナ製剤感受性肺がんのセカンドライン治療に、米食品医薬品局が承認した治療薬はトポテカンだけであるが、臨床的有用性が思わしくない割には、重度の血液学的毒性を引き起こしている。 活性化した発がん性転写因子を抑制することが新薬の開発につながるかもしれない。SCLCは転写因子に依存する腫瘍であることが分かっている。Rudinらが、4種類の主な転写制御因子の発現差異別に、SCLCの遺伝子のサブタイプを分類した。

まれな遺伝子変異:治療を一歩先へ進める

NSCLC患者の3%から4%にMETエクソン14スキップ変異(METex14)を認める、という報告がある。この遺伝子変異は予後だけでなく、免疫療法といった標準治療への反応が不良になることと関係している。その上、MET遺伝子変異のある患者は高齢であることが多いため、忍容性を改善する対策が必要になる。カプマチニブは、非常に高い選択性とMET阻害作用を持つ薬剤として開発されており、MET遺伝子変異を生じさせたがん動物モデルに対してin vitroとin vivoの両方で効果を示している。

ALK融合遺伝子陽性NSCLCにおける血液検体を用いたリキッドバイオプシー

血液検体を用いる診断検査というのは肺がんの診断だけでなく、遺伝子変異の予測にも利用できます。肺がんの場合は現在、患者個人のDNAにどのような変異があるかによって、細かくいくつものサブグループに分類しています。現在の技術をもってすれば、組織中の遺伝子変異はもとより血液中の遺伝子変異も検出可能です。

臨床試験の最新結果および免疫療法の新規バイオマーカー

KEYNOTE-001試験は、進行NSCLCの治療歴のない患者と治療歴のある患者に抗PD-L1抗体薬ペムブロリズマブの作用が見られた、初の臨床試験である[1]。このマルチコホート第IB相試験では、腫瘍細胞のうちPD-L1発現が陽性になる細胞の割合を表すTPSがペムブロリズマブ群で上昇し、より大きな効果が示された。2012年の5月から2014年の7月にかけて、進行NSCLC患者550人が非ランダム化比較試験の4試験と、ランダム化比較試験の2試験の患者コホートとして組み入れられた。

EGFR遺伝子変異陽性肺がんへの新規第一選択薬およびその他の知見

EGFR遺伝子変異陽性肺がん患者には、EGFR TKIがおおむね有効だが、投与開始後8~12か月以内に耐性を獲得することは避けられず、治療がうまくいかない原因となっている。EGFR阻害薬の活性を延長させる選択肢のないところが、アンメットニーズになっている。VEGFとEGFRのシグナル伝達経路をダブルでブロックする方法が、このアンメットニーズへの解決策になる可能性がある。

早期NSCLC:期待を持てる(ネオ)アジュバント療法

切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)のⅠ期からⅢ期と診断された患者の半数以上は再発するため、効果の高い治療法が求められている[1]。転移巣の広がりと転移後の生存にはPD-L1のupregulationが非常に重要になることを、Chenらが動物モデルを参照して示した[2]。この点を念頭に置いて、ネオアジュバント療法に免疫療法を行った場合の有効性などを、複数の臨床試験で検証している。

巻頭言

肺がんが今日でも世界の公衆衛生上の問題であり、各国でがん関連の死因として最も多い疾患です。寿命の全体的な延びに伴い、がんの発生率も上昇していることから、最近ではとりわけこの点が高齢者にとって意味を持ってきています。肺がん患者が診断を受けた年齢の中央値は、米国では70歳、ヨーロッパでは65から70歳となっています。有効性や安全性を検討していたり、それが臨床現場ですでに証明されていたりする治療法が数多くあることを考えると、高齢患者への治療に意味はないと考える余地はないと言えるでしょう。

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