小細胞肺がん:有効性と忍容性改善への道のり

ATLANTIS試験

プラチナ製剤ベースの化学療法の実施中やその後に病勢が進行した小細胞肺がん(SCLC)患者には、発がん性転写因子を選択的に阻害するルルビネクテジン3.2 mg/m2の3週間おきの投与が米国で承認を受けている。そこで、化学療法を1ライン受けた後に再発したSCLC患者307人を対象に、ルルビネクテジン 2 mg/m2とドキソルビシン40 mg/m2を3週間間隔で最大10コース併用投与し、次いでルルビネクテジン3.2 mg/m2を3週間間隔で単独投与した場合の有効性と安全性を第Ⅲ相ランダム化比較ATLANTIS試験で調査した。対照群の患者(n=306)には、トポテカンもしくはシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチンを併用するCAV療法を3週間おきに投与した。一次治療終了後に化学療法完全休薬期間(CTFI)を30日以上とること、また、両群の全患者にG-CSF製剤を予防投与することを組み入れの条件にした。両群とも患者のCTFIは90日未満、90~179日、180日以上の3通りに、ほぼ均等に分かれた。脳転移を認めたのは被験群の15.0%、対照群の16.0%である。

被験群と対照群の生存(OS)曲線が重ならなかったため、主要評価項目で有意差を示すことができなかった。OSはルルビネクテジン+ドキソルビシンの被験群で8.6か月、トポテカンまたはCAV療法の対照群で7.6か月になった(HR:0.967、p=0.7032)[1]。層別化因子別に分けたすべてのサブグループでも(CTFI、ECOG PS、ベースライン時の脳転移の有無、前治療での抗PD-(L)1抗体薬使用の有無)、被験群に対照群以上の統計的有意性のある効果は生じなかった。無増悪生存期間の中央値は被験群に統計的有意な延長効果がみられた(HR:0.831、p=0.0437)。CTFIが180日以上のサブグループと前治療で抗PD-(L)1抗体薬を使用したサブグループにはルルビネクテジンを併用した効果が現れやすかった一方で、CTFIが90日未満のサブグループと脳転移のあるサブグループにはトポテカンやCAV療法の効果が現れやすかった。全生存率については両群で大差はなかったものの(被験群は31.6%、対照群は29.7%)、奏効期間は被験群で延びていた(奏効期間の中央値は同5.7か月、同3.8か月、HR:0.581、p=0.0012)。

統計的有意性があった血球減少症の発現率の低さ

安全性解析が示すように、対照群よりも被験群でAEの発現率とAEによる死亡率は低くなっており、減量・投与の遅延・投与中止にも同じ傾向が現れていた()。被験群にみられたグレード3以上の血球減少症の発現率の低さに有意性があったことが、次のような結果が出た主な要因だろう。貧血の発現率は被験群が14.5%、対照群が31.1%(p<0.0001)、好中球減少症は37.0%と69.2%(p<0.0001)、発熱性好中球減少症は4.0%と8.3% (p=0.0377)、血小板減少症は13.9%と31.1%(p<0.0001)だった。

非血液毒性に関しては両群に大差はなかった。ルルビネクテジンをSCLC患者に二次治療で使用することの臨床的有用性を、以上の成績が示す結果となった。CFTIが非常に重要性の高い二次治療の予後予測因子になることも、同試験で確認している。イリノテカンや免疫チェックポイント阻害薬といった他の細胞障害性抗がん薬と、ルルビネクテジンとの新たな組みあわせを検討する試験が現在進行中である。

表 ルルビネクテジン+ドキソルビシンの併用療法、トポテカン単独またはシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン(CAV)療法を二次治療として行った際に認められた有害事象

CASPIAN試験:3年生存率

進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者を対象に、抗PD-L1抗体薬のデュルバルマブ+プラチナ製剤のエトポシド(EP)に、場合によっては抗CTLA-4抗体薬のレメリムマブを追加する一次治療を、第Ⅲ相国際共同オープンラベルランダム化3群間比較CASPIAN試験で比較検討した。2つの被験群には3週間おきの併用療法を4コース行い、その後は病勢が進行するまでデュルバルマブを維持療法として4週間おきに投与した。対照群にはEPを単独で3週間おきに投与して、これを最大6コース行い、次いで予防的全脳照射を任意で行った。

被験群のデュルバルマブ+EP群を対照群のEP単独群と比べるとOSの改善に統計的有意性が認められた(HR:0.73、p=0.0047)[2]。中央値の2年後以降でもこの状態が続いており、OSの改善も数字上は対照群のそれを上回ったが、統計的有意性があるレベルには達していなかった[3]。追跡期間の中央値の3年後以降のOSを規定の時期に探索的データ解析した成績を、Paz-AresらがESMO 2021で報告した[4]。無増悪生存期間と奏効期間に関するデータは、前回のデータカットオフの都合で収集しておらず、安全性についても死亡を含めた重篤なAEのみを解析している。ES-SCLC患者に対する抗PD-(L)1抗体薬とEPの併用投与を調査した第3相試験は他にもあるが、この試験での追跡期間の中央値の長さが現時点で最長であることが、OSを解析した最新データから見て取れた。

生存者の割合が3倍にのぼる

対照群のOSを被験群が上回り、その状態が続いていることが示された。被験群のOSの中央値は12.9か月、対照群は10.5か月になり、死亡減少率に換算すると29%(HR: 0.71、p=0.0003)ということになった()。36か月後には被験群の生存者の割合が対照群の3倍にのぼり(17.6%と5.8%)、すべてのサブグループで被験群に同レベルのOSの延長効果が現れた。

デュルバルマブ+EPにトレメリムマブを追加投与した被験群でも対照群に比べてOSの改善が続き、死亡減少率は19%、3年生存率は前者が15.3%、後者が5.8%になった。両被験群の大部分の患者はデータカットオフの時点でもデュルバルマブの治療を受けていた。トレメリムマブとEPを併用しても、過去の解析データとの違いは見られなかった[3]。

安全性プロファイルも同様に、この治療のものと既知の内容は一致していた。被験群と対照群では重篤なAEの発現率は似通っていたが(32.5%と36.5%)、トレメリムマブを追加した群ではこれまでの報告にあった通り同発現率が高くなっていた(47.4%)[3]。治療関連AEによる死亡率は被験群が2.3%、これにトレメリムマブを追加した群が4.5%、対照群が0.8%だった。デュルバルマブとEPの併用療法がES-SCLC患者への標準の一次治療となることを、今回得た解析データがさらに裏付けたと、著者らは締めくくった。

図:CASPIAN試験におけるデュルバルマブ+EP群とEP単独群の3年後の全生存期間の最新データ

:CASPIAN試験におけるデュルバルマブ+EP群とEP単独群の3年後の全生存期間の最新データ

REFERENCES

  1. Paz-Ares L et al., Lurbinectedin/doxorubicin versus CAV or topotecan in relapsed SCLC patients: phase III randomized ATLANTIS trial. WCLC 2021, PL02.03
  2. Paz-Ares L et al., Durvalumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer (CASPIAN): a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. Lancet 2019; 394 (10212): 1929-1939
  3. Goldman JW et al., Durvalumab, with or without tremelimumab, plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide alone in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer (CASPIAN): updated results from a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol 2021; 22(1): 51-65
  4. Paz-Ares L et al., Durvalumab ± tremelimumab + platinum-etoposide in first-line extensive-stage SCLC: 3-year overall survival update from the phase 3 CASPIAN study. ESMO 2021, LBA61

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