診療を変える肺癌ステージ分類の変更

TNM分類が最近第8版に改定された。2009年に発刊された第7版[1]と比較して、予後と研究の改善を目的として、肺癌のステージ分類にいくつかの重要な調整がなされている[2]。スペイン、バルセロナのHospital Universitari Mútua Terrassa、胸部手術部のRamón Rami-Porta医師 (MD、PhD) は、次のように述べている[3]。「研究は、さまざまな治療選択肢で治療可能な小腫瘍において特に重要です」。新版は非常に多くの患者に基づいており、これによりロバスト性がサポートされている[4]。

小腫瘍の分化

T分類に関する変更は、肺の小腫瘍の多様性を原因としており、小腫瘍は最新のコンピュータ断層撮影技術を使用して、診療所で日常的に同定できる。「2011年までに定義されていなかった腫瘍に名前が付けられました」とRami-Porta医師は強調した。例えば、これは転移していない腺癌 (Tis [AIS]) および低浸潤性腺癌 (T1mi) に適用される。過去には、「Tis」という用語は扁平上皮癌のみを示していた。「患者が双方を有することがあるので、区別することが重要です」とRami-Porta医師は説明した。新しいT1aカテゴリーに対応する最小の固形腫瘍は、最大直径1 cmである(表1参照)。
新しい分類により、より小さな腫瘍への認識が高まるであろう。また、これらの腫瘍は、定位放射線療法、高周波アブレーション、マイクロ波、またはこれらの組み合わせなどの新しい治療選択肢を研究する際に用いられることがある。一般に、腫瘍生物学の研究と同様に、最小限の切除も重要である。「転移のない腺癌のような一部の腫瘍はすぐに切除されますが、その代わりに観察したり、増殖や密度などの因子の評価したりすることが可能となります。」

診療を変える肺癌ステージ分類の変更

NとMの変更

リンパ節関与の定量化のため、第7版で定義された結節域だけでなく、リンパ節ステーションも使用することができる。「結節ステーションに基づいてリンパ節病変を定量化するには、5つの可能性がある」とRami-Porta医師は述べた(表2参照)。これらは、N1bおよびN2a1の患者が同じ予後を示すので、4つの予後グループに対応する。関与するリンパ節、リンパ節領域、リンパ節ステーションの数が重要である。これはリンパ節率にも当てはまり、リンパ節率は、関与する節と除去された節の比率として計算される。「これらはすべて、病理的ステージング中にのみ評価することができます」とRami-Porta医師は指摘した。
新しい分類のM分類に関しては、M1病変の数は病変部位よりも重要であると述べている。胸腔内転移に関しては、1つの器官または複数の器官での複数の胸腔外転移から単一のものを分離し、改善されている。「胸腔外転移のサブ分類は、オリゴメタスタティック疾患およびオリゴプログレッションの均質性の定義に寄与するであろうが、これは今のところかなり緩い定義がされている」とRami-Porta医師は指摘した。

診療を変える肺癌ステージ分類の変更

測定および染色に関する推奨事項

他には、部分的な固形腫瘍の腫瘍サイズの評価に関することが刷新された。コンピュータ断層撮影評価では、固形部分は侵襲性成分と同じようにみえるので、固形部のみが対象となる。病理医は、鱗状成長を示す部分を含め、腫瘍全体の大きさに関係なく、浸潤性成分のサイズのみに基づいてT分類を決定する。「この刷新は我々の診療・治療を変えるでしょう」とRami-Porta博士は強調した。
「腫瘍全体のサイズを測定するのに慣れていた」
さらに、内臓胸膜の浸潤は重要な予後因子であることが示されており、これを同定するために弾性染色を使用することが推奨される。Rami-Porta医師は、ステージは胸膜浸潤の程度に応じて変えることが出来ると指摘した。「ヘマトキシリン染色やエオシン染色で充分かどうか明確でない場合は、弾性染色を使用することが重要です」複数の原発性病変を有する肺癌がある場合、TNM病期分類はそれぞれの腫瘍に適用される。スリガラス様陰影/鱗状様相を有する複数の腺癌において、最も大きなT分類が使用され、括弧内に腫瘍数が示される。
「肺癌のためのTNM病期分類の第8版における革新により、予後を改善するための我々の能力が高められ、将来の試験での腫瘍の層別化が改善され、均質腫瘍の分類が促進され、またプロス
ペクティブデータの収集が促進される
でしょう」とRami-Porta医師は結論付
けた。

参考文献

  1. Sobin LH et al., TNM classification of malignant tumours, 7th Edition.November 2009, Wiley-Blackwell, ISBN: 978-1-4443-3241-4
  2. Goldstraw P et al., The IASLC Lung Cancer Staging Project: Proposals for revision of the TNM stage groupings in the forthcoming (eighth) edition of the TNM classification for lung cancer.J Thorac Oncol 2016; 11(1): 39-51
  3. Rami-Porta R, Lung cancer staging – changing the clinical practice, WCLC 2016, PL03.02
  4. Rami-Porta R et al., The IASLC lung cancer staging project: the new database to inform the eighth edition of the TNM classification of lung cancer.J Thorac Oncol 2014; 9: 1618-1624

More posts

診療を変える肺癌ステージ分類の変更

診療を変える肺癌ステージ分類の変更 TNM分類が最近第8版に改定された。2009年に発刊された第7版[1]と比較して、予後と研究の改善を目的として、肺癌のステージ分類にいく

EGFRおよび他の変異における液体生検

EGFRおよび他の変異における液体生検 組織生検および再生検と比較して、液体生検では最少の侵襲性、腫瘍奏功をモニタリングするための経時的に連続測定が可能、X線検査に先立って