第I相試験であっても新薬には劇的な効果が見られる
Herbert Ho Fung Loong, MD中国、香港中文大学、一期臨床研究中心、臨床腫瘍科次長、臨床准教授
現時点で進行中の第I相試験の中で、進行肺がんのどの新薬が最も有望なのだろう?
肺がんだけでなく様々ながんの新規治療薬として、現在多くの候補が第I相試験で評価されている。第I相試験で評価されている薬剤の作用機序が、あるがんに作用するのかどうかを、これまであまりにも理解しようとしなかったのではないだろうか。しかし、最近登場する多くの薬剤は分子標的薬なので、どの薬剤が有用なのか、すでに前臨床の段階で判断がつく。とりわけ肺がんの場合、新規の分子標的薬の多くに期待が持てそうだ。たとえばこのことは、RET融合遺伝子陽性がんの非常に少数のサブグループにも当てはまる。この分野の治験成績が今回の会議で報告されており、Geoffrey Oxnard医師がRET特異的阻害薬のLOXO-292を評価する第I相試験の最新データを発表しているが、劇的な治療反応性が見られている[1]。2、3年前までは、第I相試験でここまで優れた治療反応性が見られることはなかった。
他のがん研究に比べた肺がん研究の特殊さとは?
肺がん研究の特殊さは他のがん研究のそれを大きく上回っている。その1つは患者集団だ。患者数の点でいえば肺がんは非常に大きながんであり、一口に肺がんといっても多くの種類に分かれる。一部の肺がんにはドライバー分子が強く関わっていて、それを標的に治療できるだろうが、それ以外の肺がんの標的はわからず、免疫療法はかなり大きな手段だ。要は2つのバランスを取ることだ。1つは治験に参加させるべき患者を見極めること、もう1つはドライバー分子を同定し、観察することだ。では、ドライバー分子を持つ患者にとって免疫療法の役割は何だろう。最大の課題はこの2つをどう組み合わせるかだ。この課題の解決策はまだ見つかっていない。
肺がんは予防と治療の両方に取り組む必要のある疾患だということを考慮すると、肺がん研究のどの分野により注目する必要があるのだろう?
肺がん予防については、2018年度世界肺癌学会議の場で肺がん検診に関する非常に優れたアブストラクトが発表された[2]。危険因子を取り除いて肺がんの発症を完全に予防するということであれば、具体的に言えば小細胞肺がんだが、予防自体が最善の方法となる肺がんがあることも間違いない。ただ、この方法には相当な努力が必要になる。
一方、肺がん治療の新薬の開発にとって最大の難点は、将来の解析に用いる生体試料として大量の腫瘍組織を採取する必要がある点だろう。多くの場合、初回の生検で採取する組織はごく少量だ。もう1つの課題は、分子標的治療や免疫療法という異なる種類の治療法の併用だけでなく、放射線治療、手術といった前述とは別の治療法との併用である。まだまだ進展が見られる分野で、学ぶことが山のようにあるが、私たちは正しい方向に進んでいると思っている。
参考文献:
- Oxnard GR et al., Clinical activity of LOXO-292, a highly selective RET inhibitor, in patients with RET fusion+ non-small cell lung cancer. WCLC 2018, OA12.07
- De Koning HJ et al., Effects of volume CT lung cancer screening: mortality results of the NELSON randomised-controlled population based trial.WCLC 2018, PL02.05
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